Vol.223-1 「地域密着」を目指して
株式会社ファミリーマート
多摩・甲信ディストリクト甲府営業所
営業所長 新井 史人
1.はじめに
私たちファミリーマートは、2017年1月末現在山梨県に87店舗を展開している。県内出店以来、掲げてきた方針は「地域に密着した質の高い店舗運営」である。現在のコンビニエンスストアは食料品、飲料、酒類、日用品まで多くの商品を販売しており、1店舗あたりの販売品目はおおよそ3,000程度である。中心となる商品は「お弁当・おむすび」など、中食(なかしょく)商品と言われる、その場ですぐに食べられる食品であるが、昨今のコンビニエンスストアの利用者は高齢者も増えており、幅広い年代の方々に喜んでもらえる商品開発、店舗での品揃えが求められている。また、店舗の近隣の方々、車での通りすがりの方々が気軽に立ち寄り、必要なものが購入できる店としての利便性も求められている。今回この場をお借りして身近にあるファミリーマートを知って頂けたなら幸いである。
2.顧客満足のために
冒頭にも述べたが、商品の中心は「お弁当・おむすび」などの中食商品であり、これらについては1日3便体制(深夜、午前中、夕方)で店舗に届く仕組みになっている。午前中に店舗にある端末を利用して、翌日の商品の数量および納品の時間を指定すると中食製造工場(山梨県の場合は主に長野県内の工場を利用)で製造された商品が県内87店舗へと届く仕組みになっている。これは、「必要なものを必要な時に必要なだけ」と「常に新鮮なものを」そして何より、「お客様が欲しい時に店にある」ことを実現するためにこのような体制をとっている。また、中食製造工場にとっても注文に応じて作ることで、計画的な生産体制がとれ、廃棄が少なくなることが大きなメリットとなっている。
店舗がオーダーしたものを生産する体制、およびその物流体制は整っているが、「商品が欠品することなく、お客様が欲しい時に欲しい物が常に店舗に並んでいる状態」を作り上げることは非常に難しい。なぜならば、製造、物流体制が整っていたとしても、お客様の動向、ニーズをしっかりと捉えることができなければ、適切なオーダーは出来ず、結果としてお客様が必要とする商品が店頭に並ばなくなってしまうからである。
「欠品なく、お客様が欲しい時に欲しい物が常に店舗に並んでいる状態」を実現するためには、過去から蓄積されたデータの分析や天候予測、店舗周辺の情報収集(学校行事、地域行事から道路工事、建設工事まで広範囲におよぶ)を基にいかに正しい仮説を立てられるかが重要になる。また、立地によるお客様の違いも大きな要素となる。例えば、学校(中学校・高校・大学)などの近くではボリュームのあるお弁当が良く売れ、住宅地の近くでは冷凍食品、惣菜などがよく売れるといったように異なる立地により商品動向のベース自体が違ってくるので、山梨県内87店舗を理想の店舗にすることは極めて難易度の高いこととなる。
私は東京都区内、長崎県佐世保市での勤務を経て山梨県に来たのだが、山梨県内の市場特徴は車での来店が多いことと、カップ麺、缶詰などの加工食品や日用品などがよく売れることである。また、同じ県内でも気温差が大きいため、特に今の季節(冬から春)や夏から秋では明確に商品の売れ行きが異なってくるので売場作りも商品構成が地域によって異なってくる。このように同じファミリーマートの店舗においても様々な要素によって商品の動きは異なり、それに合わせた店舗のマネジメントが必要であり、このことが出来るかどうかが来ていただいたお客様に満足していただけるか否かの分かれ目になる。
また、昨今では様々な業界における人手不足が問題になっているが、コンビニエンスストアの労働力の大半はアルバイトによるところが大きく、その確保も難しい時代になっている。その中で現在ではレジ横にある商品(ファミチキ・中華まんなど)の店内調理、公共料金の支払い、各種チケット販売など店舗の機能は多様化しており、従業員として覚えなければならないことが格段に増えているのも事実である。このアルバイトの育成も店舗マネジメントの非常に重要な要素となっている。
3.地域貢献
私どもファミリーマートは山梨県内に87店舗を展開し、広く県民の皆さまの生活を支える社会的インフラ機能を有していると考えている。2008年に「生活必需物資の調達に関する協定」、2011年には「包括的連携に関する協定」を山梨県と締結し、行政と協力して県民生活に貢献するべく取り組んでいる。「生活必需物資の調達に関する協定」では3年前の大雪時には富士河口湖町において「お弁当、パン類、カップ麺、菓子類」を3トントラックに積んで移動販売を実施し、また昨年1月には、おむすび2,130個、パン類2,200個をヘリコプターで東京ヘリポート(東京都江東区)から空輸し、県内店舗に届けた。このような自然災害時の商品供給能力は、県民の皆さまの生活への貢献に対して大きな意義を持つと考えている。そして「包括的連携に関する協定」では、山梨県産の桃、ぶどうを使用したスイーツ、ご当地グルメとして「吉田風うどん」、「ほうどう」、「山梨県産豚のカツ丼」など7品目を山梨県を含む関東地方のファミリーマート店舗で販売した。また、企業の農園づくりでは甲府市帯那地域において耕作放棄地の再生、地域の方々との協働による田植え、稲刈りを通した交流活動を現在も行っている。
ファミリーマートの地域密着とは地域に根ざしたニーズをしっかりと店舗運営に生かすと同時に緊急時支援、地域活動支援も含まれており、今後とも変らぬ姿勢で取り組んでいきたいと考えている。
4.今後の姿
現在のコンビニエンスストアにおける商品動向の管理・分析、店舗側からのオーダーに連動した製造体制および物流体制は優れたシステムである。しかし、それだけではコンビニエンスストアは成り立たないと感じている。なでなら地域によって必要とされるものは異なり、店舗自体の役割やあり方も異なるからである。画一的な応対ではなく、1店舗1店舗が地域に根ざしたニーズに寄り添いながら店舗運営を行うことが必要である。そのようにして初めて、お客様からの支持が得られ、コンビニエンスストアとして存在意義が発揮できるものと考えている。
目指す姿は「地域密着」。山梨県に来て9ヶ月が経ち、益々その思いは強くなっている。近くのファミリーマートで朝から夜まで。県民の皆さまの生活をサポートしたいと考えている。年齢・性別を超えた一人ひとりのお客様に、一つひとつの地域に生活の利便性をお届けしたいと考えている。