VOL.80 「10文字」
「プレミアムフライデー」。少々分かりにくい造語ではある。官民協働で消費底上げと働き方見直しを目指す大キャンペーン。給与支給日に近い月末の金曜日には15時に仕事を切り上げ、自分の時間を楽しもうということのようだが定着するのか、どれほどの効果が得られるのか、ニュース番組、新聞紙上などを見てもいろいろな意見がある。
30年ほど前、「ハナキン(花の金曜日)」という言葉があった。バブルに向かうイケイケの経済環境と週休二日制の導入で土曜休日という労働環境の変化によって一気に広まった時代を表す言葉であった。「金曜の夜は飲んで・食べて遅くまで遊んじゃおう」である。学生ながらに、その言葉にワクワクする響きを感じたものだった。そんな「ハナキン」もバブルの崩壊と共に聞くこともなくなり、今では完全なる死語となってしまった。
さてさて、「プレミアムフライデー」、同じ金曜日の仕事終わりを表す言葉だが、その意味はまったく異なる。「ハナキン」はすでにある社会状況を追いかける形で生まれ、「プレミアムフライデー」はこれからの社会状況を創り出すために官主導で生まれた言葉である。
きっかけはアメリカの「ブラックフライデーを日本にも」という流通業界の働きかけによるもので実際、「プレミアムフライデー推進協議会」には働き方見直しは後付けのような気がするほど流通関係の人々が多く名前を連ねている。
定着するにはそれぞれの労働環境によるところが大きく影響するが、方策として宣伝・普及活動をするだけではなく、15時に仕事を切り上げての消費には「プレミアムなお得」を感じる事業者サービスが必要になってくるかもしれない。そのまま帰宅では空回りになってしまう。個人的には「ハナキン」のような和語が良かったと思うのだが。
山梨総合研究所 主任研究員 末木 敦