「最適感」より「納得感」を


毎日新聞No.483 【平成29年3月3日発行】

 この仕事をしていると、ファシリテーターの役割を任せられることが少なくない。
 ファシリテーションとは何か。特定非営利法人日本ファシリテーション協会によると、「ファシリテーションとは、人々の活動が容易にできるよう支援し、うまくことが運ぶようかじ取りすること。集団による問題解決、アイデア創造、教育、学習など、あらゆる知識創造活動を支援し促進していく働きを意味する」とされ、その役割を担う人がファシリテーターと言われる。つまり、会議のうまい進行役である。
 この「うまい」というのは、会議の結果をまとめることが上手ということではない。参加者の納得感を高めるための過程(手続き)を大事にできるかどうかということだと、私は思う。
 右肩上がりの時代が終わった人口減少の今日において、地域社会にある「ヒト」「モノ」「カネ」には限りがあるため、地域のさまざまなステークホルダー(利害関係者)に対してその要求を十分に満たすことは極めて難しい。また、世の中のスピード感もめまぐるしく、対応の迅速化も求められている。
 特に、まちづくりなどの社会的な合意形成が必要となる場合においては、議論の結果の“最適感”よりも、議論の過程の“納得感”が重要となる場合が多いのではなかろうか。

 ところで最近、「アメリカファースト」や「都民ファースト」をよく耳にする。アメリカの国益を第一にする、都民を第一に考える、といったところであろうか。
 アメリカファーストや都民ファーストといった考え方は本来、その内容について多くのステークホルダーによる議論があっての話だと思われるが、そうでないと「○○ファースト」と言った瞬間、思考停止に陥り議論の方向性が決まってしまう恐れも否定できない。

 特定の人、声の大きな人に左右されない、住民本位の開かれた納得感のある議論を期待したい。

(山梨総合研究所 主任研究員 相川 喜代弘)