Vol.224-2 ドローンを巡る動向と国・自治体・企業の取組み


【公益財団法人 山梨総合研究所 調査研究部長 中田 裕久

はじめに

 3月に、英国企業から空から自撮ができる手のひらサイズのドローンが発表された。重さわずか61グラムで最大20メートルの高さまで飛ぶという(日経新聞2017/3/23)。

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 近年、「首相官邸屋上のドローン落下」、「ドローン特区」、「ドローンを使った宅配」、「ドローンによる災害空撮」など様々な報道や画像が増えてきた。ドローンはどのような可能性があるのか、本稿では急速に普及しだしたドローンの動向及び国・自治体・企業の取組みを紹介したい。

 1.ドローンとその用途

 ドローンとは、無人航空機の俗称で、自律制御がある程度可能な無線操縦飛行機である。ドローンの種類は、マルチロータ(いくつかの回転翼をもつもの)、シングルロータ(ヘリコプターのようなひとつの回転翼をもつもの)、固定翼機(飛行機のタイプ)があるが、近年、マルチロータ型が中国をはじめ世界各国で、趣味的な用途や産業用として開発され、市場に投入されている。なお、ドローンには、すべての制御を操縦者にたよるラジコンは除外される。
 ドローンは、モーションセンサーを活用した姿勢制御技術の発展や衛星測位システムとの連携によって飛行経路を巡航する機能など、操縦技術への依存度が軽減されたことによって、様々な産業用に活用されつつある。

〇  ドローンの用途

 産業用としては、次のような用途が想定されているが、すでに実施されているものも多い。

表:ドローンの用途

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出典:日経BPクリーンテック研究所
 

2.ドローンの市場規模の予測

 ドローンの市場規模について様々な企業の予測が発表されているが、その一例は以下の通りである。

(1) 国内のドローン市場

 国内における業務用の無人航空機「ドローン」の市場規模は、2030年には1000億円 を上回ると予測されている。その総額のうち、ドローン本体の占める割合はわずかであり、ドローンを用いた関連サービスがほとんどを占める。また、ドローンの高機能化とともに指数関数的に拡大すると予想されている(日経BPクリーンテック研究所)。

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図 ドローン市場の推移(出典:日経BPクリーンテック研究所)

(2)世界のドローン市場

 矢野経済研究所の予測(矢野経済研究所レポートサマリー)によると、世界における「ドローン」の市場規模は、軍事用と民間用(産業、ホビー用及び関連サービス)を合わせると、2015年で1兆2,410億円。2015年から2020年にかけて年平均成長率(CAGR12.9%で推移し、2020年には22,814億円に達するという。また、現状は軍事用が過半を占めているが、2020年には民間、軍事用が半々になる。

3.ドローンの利活用の動向

 名目GDP600兆円に向けた成長戦略(「日本再興戦略2016」)では、データ利活用プロジェクトを推進する。その柱として介護ロボット、スマート工場、自動走行などに並んでドローンによる配送などを掲げている。

 (1)ドローンによる点検・検査

 2012年、中央自動車道笹子トンネルの天井版の崩落事故を契機に、政府は147月から道路管理者に対し、5年毎の目視による点検などを義務化し、その健全性を4段階で診断するようにした。NECは千葉大発ベンチャー企業、自動制御システム研究所と共同で、ドローンに搭載したカメラや打検機で収集した画像や音から、ひび割れなどの異常を検知する技術を開発している。2015年に1112月には橋や模擬トンネルを使って現場検証を実施。2019年の実用化を目指している(SankeiBiz 2016/3/10)。
 兵庫県は県測量設計協会と連携し、ドローンを使って河川を監視するシステムを開発する。ドローンが自動航行して河川の各箇所を動画で撮影し、そのデータを位置情報と連動させて管理する。パソコン画面で見られるようにし、経年変化を把握しやすくする。9月を目途に試作版を作り、改良を加えた上で20183月までに完成させる(日本経済新聞2017/2/16

 (2)ICT工事

 20169月に政府が設置した「未来投資会議」において、公共工事を受注した場合に、測量や設計にドローンを利活用することを義務化することがきまった。
 受注、測量、施工計画、建設、検査というフローの中でドローンの機能を最大限に生かし、ドローンによる検査までおこなうような効率的な仕組みにしていくことが狙いである。
 また、16年度から、すでに国が発注する3億円以上の公共工事には、ドローンなどの利活用が義務づけられている(ドローンHappyライフ2016/9/12)
 政府の見込みでは、2025年までに340万人の技能労働者のうち110万人が高齢化などで離職する可能性があり、ドローンなどで測量を効率化し、正確なデータを集約し、防災などにも活用するといった仕組みも検討している。こうした、ドローンやデジタル情報でコントロール可能な建設機器の導入が必要になるが、政府や地方自治体では税制優遇策や金融支援なども考えていくとしている。

〇 鬼怒川堤防工事

 2015910日、台風に伴う大雨で、茨城県常総市の鬼怒川堤防が、延長200mにわたり決壊した。国土地理院はドローンを飛ばして破堤防や浸水の様子を動画撮影し、Web上に公開した。この復旧工事現場にもICT工事が導入されている。茨城県内では2016年度、国交省の発注分26件にICT活用工事が適用され、鬼怒川の堤防工事などの土工事で導入された。ドローンを用いた3次元測量で現場の地形データを取得し、必要な土量を算出し、これをもとに作成した設計データをICT建機に転送。現場ではICT建機が衛星で位置情報を確認しながら、半自動制御で作業を進める。工事担当者は「1日の作業量は単純計算で5倍程度に増えた」という(茨城新聞2017/3/23)。

 (3)ドローンによる配送実験

 経済産業省とNEDO、福島県、南相馬市、自律制御システム研究所は、112日に南相馬市の海岸で実施した世界初となる完全自律制御によるドローンを使った長距離荷物配送の飛行実験に成功した。
 約12kmの長距離を移動し、重さ約500gの飲料を届けた。ドローン開発・製造を手がける自律制御システム研究所(千葉県)によると、10kmを越える配送実験は世界初である(河北新報2017/1/13 他)。

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NEDO ニュースリリース

 

4.ドローンをめぐる課題

(1)安全のためのルールづくり―航空法の改正

 20154月、首相官邸屋上でのドローン発見事件、5月長野善光寺の御開帳でのドローン落下事件を契機に、ドローン飛行を規制する法整備が検討され、20159月に航空法が改正され、無人飛行機(UAS)に関する新たな規定が設けられた。
 「人口集中地域の上空」「空港周辺の上空の空域」「上空150m以上の空域」などに無人航空機を飛ばす場合は国土交通省の大臣の承認が必要となった。この承認には、操縦者の資格、機体の審査・登録・点検、保険などが求められる。 

(2)操縦技能訓練

 ドローンの操縦技能のトレーニングは、一般社団法人日本UAS産業振興協議会(JUIDA)の認定スクールで行われ、証明書が発行される。認定スクールは2015年度に7法人でスタートし、201611月では38スクールとなっている(ドローンが拓く未来の空、鈴木真二著2017/3/10)。

(3)無人機の自動管制システムの開発

 ドローンなどの無人飛行機が配送サービスなどの様々な用途に利用拡大されていくと、航空機とドローンの衝突回避が大きな課題となる。
 国土交通省で許可されたドローン飛行申請数は、201612月時点で1万件を超えている。また、政府は2018年を目途にドローンによる配送を可能するべく、航空法の見直しを検討している。自動制御ドローンに対する自動管制システム(UTM)は、ドローンの配送に不可欠の条件になる。海外では2014年からNASAUTMを開発、20167月に欧州でもGUTM、日本ではJUTM(日本無人機運航管理コンソーシアム)という団体を設立するなど、UTMが世界的な関心事になっている。
 民間ベースのUTMも登場しており、楽天と米国のUTMベンチャーであるAirMap社は共同で自動管制システム会社を設立し、日本における本格的なUTMを目指している(マイナビニュース2017/3/16)。

(4)ドローンの技術的課題―飛行時間

 ホビー用にも業務用にも利用されるマルチコプター(複数の回転翼を持つ)タイプのドローンの弱点は、20分程度の飛行時間しか対応できないことである。リチウムイオン電池の充電に数時間かけ、実際には画像も数分程度しか撮れないのが現状である。この問題を克服するために、世界のメーカーは技術開発を行っている。
 燃料電池を搭載したドローンはシンガポール(20154時間)、英国(2015、数時間)、中国(20163時間)、韓国(20171時間以上)の企業から発表されている(HUS.org2015/5/21、日本経済新聞2015/12/17、深せんドローン紀行2016/7/9、民団新聞2017/1/18)。
 なお、群馬県の企業が、ドローンに低振動のガソリンエンジンを搭載することで、飛行時間を12時間延ばせると発表した。農薬散布や測量の用途を視野に来年度の実現化を目指す(毎日新聞2017/1/26)。

 5.災害時におけるドローンの活用例

 行政や住民にとって、地震、洪水、土砂災害、大火などの災害が発生した時に一早く、被災状況などを把握し、復旧・復興のための情報を収集することは重要である。
 20164月の熊本地震後には国土地理院がドローンを飛ばし、被災状況の映像を公開した。また、熊本城や高速道路の復旧に向け、余震騒ぎが収まった段階で、ドローンを飛ばし、様々なデータ分析を行い、復旧工事に役立てることなども行われた。
 今年2月のアスクルの物流倉庫の火災では、さいたま市消防局は小型ドローンを飛ばし、建物の燃焼状況などを空撮した。総務省消防庁によると、火災での運用は珍しい。総務省消防庁によると、ドローンは不明者の探索や情報収集に役立つとして、全国で導入に向けた動きが進んでいる。昨年3月にはさいたま市と千葉県に機体を試験的に配備。両市は操縦訓練など半年の準備期間を経て運用を始めた(日経新聞2017/3/21)。
  広島県は、災害発生時の情報収集にドローンを活用しようと、空撮技術をもつ損害保険ジャパン日本興亜と協定を結んだ(読売新聞2017/3/23)。甲府市と土地測量会社「昭和測量」は31日に災害協定を結んだ。市内で大規模災害が発生し、目視での現場確認が困難な場合、同社がドローンで空撮調査をし、災害の拡大防止や被害の早期復旧を目指すことが目的である(毎日新聞2017/3/23)。

 6.まとめ

 ホビー用ドローンで圧倒的なシェアを持つDJI(中国)は2006年創業、わずか10年で急成長した企業である。米国ではアマゾン、グーグル、フェイスブックなどが無人飛行機分野に参入し、ドローンを情報通信システムとして使い、宅配などの新規ビジネスを意図するなどドローン本体の開発とともに、新規サービスの開発は揺籃期にある。
 現在、普及しているドローンのほとんどが外国製であるように、日本は追随する立場であるが、生存者の発見、救援物資の供給、被災者を孤立地域から救助するためのツールとして、ドローンの災害・復旧への活用は大いに期待できる分野である。また、災害前の情報が収集されているなど事前の準備があれば、被災後の状況や収集データと比較することにより、事後対策を迅速に効果的に行うことができると思われる。
 ドローンの災害時活用については、甲府市と測量会社の災害協定のような方法が他の自治体にも導入されていくと思われる。自治体と地元企業の緊密な連携を期待したい。