災害現場とドローン


毎日新聞No.487 【平成29年4月28日発行】

 2年前の「首相官邸屋上のドローン落下」、「長野・善光寺御開帳の際のドローン落下」以来、ドローンの話題が急激に増えている。現在では熊本城でドローンを飛ばし、データを集め、復旧工事に役立てているとのニュースもある。
 ドローンとは、無人航空機の俗称で、自律制御がある程度可能な無線操縦飛行機で、マルチローター(いくつかの回転翼を持つもの)、シングルローター(一つの回転翼を持つもの)、固定翼機(飛行機のタイプ)の種類がある。ホビー用ドローンで圧倒的なシェアを持つDJI(中国)は2006年に創業。わずか10年で急成長した企業であり、ドローンを活用した産業サービスの開発は揺籃期にあるといえる。

 4月下旬、幕張メッセで「第3回国際ドローン展」が開催され、国内外の44社が出展。小規模な展示会であったが、産業用ドローンの実用化に向けたさまざまな技術開発が見られた。ドローン本体では、20分程度の飛行が限界の中国製などのマルチローターが多い中、韓国メーカーが強化発砲スチロール製の固定翼ドローンを出展。1時間以上の飛行が可能で、落下破損した場合でも固定翼のパーツ交換ができるとのことであった。
 日本の企業はドローンを利用した各種サービスの開発を行っており、楽天はドローンによる配送実験を紹介、東京五輪のころには実用化したいとのことであった。NECはドローンに搭載したカメラや打音検査機で収集した画像や音から、ひび割れなどの異常を検知するインフラ点検システム技術を開発。17年度の実用化を目指している。

 各地の大学では、災害現場で複数のドローンが自律して飛行する技術、山やビルの谷間であっても制御できる技術、狭い空間をくぐり抜ける技術、被災した人の声を拾える技術など、言わば災害現場に役立つ飛行ロボットの開発が進行中である。
 被災状況の確認、被災者の発見など、ドローンの活用は大いに期待できる分野である。被災前の情報が収集できていれば、被災後の状況と比較することにより、災害復旧を効果的に行うことができる。44社のうち、2社が山梨県の企業であった。県内におけるドローンのさまざまな活用を期待したい。

(山梨総合研究所 調査研究部長 中田裕久)