地域社会を支える「内助の功」
毎日新聞No.489 【平成29年5月26日発行】
今年の夏休み、初めて地域のラジオ体操当番を担うこととなった。夏休みが待ち遠しかった少年時代ははるか昔のこととなったが、朝の涼しい時間帯に皆で参加したラジオ体操のすがすがしさは今でも鮮やかに思い出すことができる。今年の夏も子供たちの記憶として残るような機会になればと思う。
総務省が4日に公表した4月1日現在における「こども(15歳未満人口)」の数は全国で1571万人であり、これは36年連続の減少により過去最低を記録、全人口に占める割合に至っては12.4%と43年連続で低下しており、少子高齢化の進展が確認される結果となった。政府は、加速する少子高齢化への対策として、誰もがあらゆる場所で活躍できる「一億総活躍社会」の実現を掲げ、経済対策や子育て支援の強化、社会保障制度改革などに取り組んでいるが、国民一人ひとりがその成果を確認できるまではしばらく時間が必要となろう。
これに関連して、最近テレビや新聞などでよく目にする取り組みに「働き方改革」がある。働く人の視点に立って、同一労働同一賃金の実現や長時間労働の是正など労働制度を抜本的に改革し、働く人、一人ひとりがより良い将来の展望を持てるようにする取り組みである。日本経済を支える労働者の処遇を改善し、労働生産性の向上と同時に労働者の日常生活の充実も図れる「働き方改革」は、少子高齢化の進む日本社会にとって優先的に取り組むべき課題である一方で、少子高齢化への対策としては労働者以外の人々への支援も重要と考える。
育ち盛りがいる我が家では、PTAや自治会活動に妻が率先して取り組んでくれており、実は冒頭のラジオ体操の準備も同様である。日常業務の繁忙さを言い訳に、これらに消極的な私は妻への感謝に堪えないが、同じように日常的に地域コミュニティを支える方々がいてくれているからこそ、暮らしやすい生活環境が成り立っていると実感している。
「一億総活躍社会」は、前述のとおり「誰もがあらゆる場所で活躍できる社会」である。それは誰もが相手の立場や考え方を理解し、お互いが尊重し合う先にある。「働き方改革」に続く二の矢、三の矢にも注目していきたい。
(山梨総合研究所 主任研究員 森屋 直樹)