VOL.86 「112億人」
国連経済社会局は6月21日、世界人口が2050年に98億人、2100年には112億人に達するとの予測を発表した。中でもインドは2024年に中国を抜いて人口世界1位となり、2100年には15億1700万人になると予測されている。一方、中国は2100年に10億2100万人となり、インドと中国で世界の人口の22.7%を占めることとなる。また、人口上位10カ国のうち5カ国をアフリカ諸国が占めることになるという。
貧困や飢餓の撲滅等を掲げた国連の「SDGs(持続可能な開発目標)」の17の目標のうち、「貧困をなくそう」「飢餓をゼロに」「すべての人に健康と福祉を」「質の高い教育をみんなに」「安全な水とトイレを世界中に」などは開発途上国に対する支援が重要とされる項目だが、これらの目標を達成することに対して、世界人口の増加、特に開発途上国での人口増加が大きな課題になる。特に「安全な水」に関しては、現在でも10億人以上の人たちが安全な飲み水を手に入れることができないという状況にあり、サハラ以南のアフリカでは、子どもたちの43%が不衛生な水を飲み、5人に1人が15歳前に亡くなっている。今後人口の増加に伴い、水の需要がさらに大きくなることが予想され、安全な水を手に入れることができない人々の増加が懸念される。
一方、日本においては現在の1億2700万人から2100年には8500万人に減少すると予想されている。人口減少の局面に入っている日本では、人口減少こそが喫緊の課題であり、人口が増加し続けている世界の状況が理解しにくい。SDGsの目標の中には、「人や国の不平等をなくそう」という目標も含まれている。国家間の格差を是正することも、持続可能な開発目標の重要な項目として位置づけられている。私たちはこの日本にあっても、世界の状況にもきちんと目を向け、広い視野で物事を捉える必要がある。
山梨総合研究所 主任研究員 小池 映之