防災の日がやって来た


毎日新聞No.496 【平成29年9月1日発行】

 今日は「防災の日」である。私が小学生の頃、91日といえば、夏休み明けの2学期の始業式であり、避難訓練の日であった。まだ暑い日差しのなか、防災頭巾をかぶりながら「災害は忘れた頃にやって来る」という話を聞いた。「防災の日」は1923(大正12)年に起きた関東大震災に由来し、その時の教訓を忘れないようにと。
 しかしながら、近年の災害の発生頻度をみると、「災害は忘れる前にやって来る」という時代になっているのではなかろうか。東日本大震災以降でも、山梨県を襲った豪雪被害、広島市の土砂災害、御嶽山の噴火に、鬼怒川の堤防決壊。そして昨年は熊本地震に、東北や北海道を中心とした台風被害。こうしてみると、地震だけでなく、日本には実にさまざまな自然災害が潜んでいることがわかる。

 世界171カ国の自然災害リスクを評価する「世界リスク報告書2016年版」(国連大学)によると、日本の自然災害に見舞われる可能性は、バヌアツ、トンガ、フィリピンに次いで世界第4位。充実したインフラや対処能力、適応能力などが評価されて総合順位は17位と災害リスクを押しさげているものの、他の先進国はいずれも100位以下である。少しでも被害を減らす努力が重要であろう。
 こうしたなか、災害による影響を最小限にとどめ、事業活動を継続する、あるいは早期復旧するための「事業継続計画(BCP)」が注目を集めるが、県内における策定状況は低調のようだ。県内市町村の策定状況は、予定も含め13市町村(平成28年総務省調査)、県内企業の策定状況も、帝国データバンク甲府支店の調査によると17%、「策定中」「策定を検討している」をあわせても半数以下にとどまる。
 小規模企業ほど策定率が低い傾向にあり、中小企業の多い本県の特性上、仕方がないと思う一方、事業の継続が困難になると想定されるリスクを洗い出し、その対策を考えるBCPの策定が業務の改善・効率化、事業の優先順位の明確化につながったという声もある。ぜひ一度検討してはどうだろうか。

 もちろん、計画を作れば安心というわけではなく、いざという時に実践できなければ意味がない。まずは防災ヘルメットのほこりを落とし、本日実施予定の避難訓練に真面目に取り組むことにしよう。

(山梨総合研究所 主任研究員 三枝 佑一)