中山間地域 生活維持へ
毎日新聞No.498 【平成29年9月29日発行】
地方自治体は「人口減少」、「高齢化」それに伴う「財政難」に直面している。Uターン、Iターンなどの転入者によって人口の社会増を、可能であれば若者世帯を増やして自然増をもたらし、地域の問題を緩和したいというのが地域戦略の柱となっている。しかし、国土交通省の推計によると、2050年には、現在、人が住んでいる地域の6割以上で人口が半数以下となり、2割が無住化地域になるという。
人口減少問題の最前線が、大都市圏から離れた山間地域である。それら地域では、もはや自治体主導では解決策は見いだせず、住民組織で交流人口の確保、空き家対策、要介護者の見守り、物販サービスや地域交通の維持など、さまざまな地域課題に取り組んでいる。中には住民組織で集団移転を検討している集落もあるようだ。いずれにせよ人口減少下の財政では、行政サービスによって現状の生活の質を維持することはますます困難となり、住民組織による地域維持活動が不可欠となっている。
中山間地域などにおいて、複数の集落が集まる基礎的な生活圏の中に、医療・福祉、買い物、公共交通、教育などの生活サービス施設を一定程度集積し、新しい地域運営の仕組みを設ける取り組みが「小さな拠点」づくりである。小さな拠点と市街地(都市)とをバスなどでネットワーク化し、地域生活を維持していこうとするのが国の国土利用の方針である。
内閣府調査によると、小さな拠点は今年5月現在、約24%の市町村に当たる424市町村で、1,506ヵ所形成されている。過疎化が先行する山陰地方では、福祉施設、休憩・物販施設をもつ小さな拠点が地域生活や地域内外の交流拠点として地域維持や地域活性化に寄与しているケースもある。
県内には、公表されている小さな拠点は山間地を抱える8市町村で24ヵ所あるが、地域運営組織を持つものは8ヵ所と3分の1に過ぎない。小さな拠点づくりは地域課題解決のための第一歩である。地域生活を支える地域運営のあり方を住民組織で検討し、自ら参加し、実行することが重要となっている。
(山梨総合研究所 調査研究部長 中田 裕久)