彼の地で感じた働き方改革の一端
毎日新聞No.499 【平成29年10月13日発行】
先月初め、仕事の関係で香港、深圳などを訪問してきた。現地に進出している日本企業の実情を実際に見てくるためである。
今回訪問した4社は、上場企業から山梨県内の中小企業まで様々な規模のメーカーの子会社である。いずれの会社も、既に進出から日が経ち地域に溶け込んでいたが、従業員の表情をみると、あきらかな違いが感じられた。最初に訪問したA社は、中国人の従業員が廊下でも作業室内でも、誰もが笑顔で挨拶をしてくれた。一方、多くの人が知っている大手上場企業の子会社であるB社では、向こう側の壁が見えない作業室で、職種ごとに色分けされた制服を着て整然と業務をこなしていたが、私たちを認めても笑顔もなく、どこかさびしげな表情に思えた。
A社は中国人の熟練労働者がリーダーとなり、しっかりとした教育が行われていた。品質改善の取り組みが日常的に行われ、社内での発表会なども実施され、頑張った人には報酬が支払われる仕組みとなっていた。また、日本人と中国人のコミュニケーションが非常に円滑で、従業員が高いモチベーションを持って仕事に臨んでいることが感じられた。一方、B社は教育期間が数日とごく短く、また、日本人との意思疎通が感じられる場面もなかった。離職率は高いものの、毎日就業希望者が多く押し寄せるため人手不足はないとのことであったが、従業員に対する「使い捨て」の感も否めなかった。
今、「働き方改革」への関心が高まっている。働き過ぎ・働かせ過ぎの是正を目指すわけであるが、そのためには、雇う人・雇われる人いずれも意識改革を求められよう。従業員が自らの問題として残業時間の削減・生産性向上に対して高い目的意識を持ち、経営サイドは従業員の努力によって生じた利潤の大半を従業員に分配する。こんな企業が増えてくれば、企業が儲かっているのに所得が増えず、消費も伸びないなどという実感なき景気拡大はなくなり、会社に対する従業員の満足度も上がると思うが、どうだろうか。
(山梨総合研究所 専務理事 村田 俊也)