VOL.88 「108.8億円」


 貴重な週末に2回連続で台風がやってきた。今年の台風の日本列島への上陸数は10月末現在で4個であり、おおむね例年並みとなっている。1951年の統計開始以来、最も上陸が多かったのは2004年の10個、反対に最も少なかったのは2008年、2000年、1986年、1984年の0個であった。
 台風21号は1021日から23日にかけて日本列島に接近・上陸し、台風を取り巻く発達した雨雲や本州付近に停滞した前線の影響により、広い範囲で大雨をもたらした。内閣府の発表した「平成29年台風第21号による被害状況等について」によると、和歌山県新宮市では48時間に888.5ミリを観測し、観測史上1位の値を更新している。人的被害は、死者8名、重傷者28名にのぼる。物的被害は多岐にわたり、特に農林水産関係では、速報値ながら被害額が1088千万円にのぼっている。
 山梨県内の被害はあまり大きく報じられていないが、床下浸水2棟、富士川水系の間門川(甲府市)で内水氾濫、身延町で土石流と地すべり、北杜市でがけ崩れによる建物の一部損壊、他にも携帯電話基地局の停波や農作物への被害などが確認されている。

 先日、とあるワークショップで市の施策について話し合う機会があった。参加者に対し「10年前と比較して、防災分野の市民満足度が上昇しており、良い方向に進んでいる。」という旨の報告をしたところ、参加者の一人からご意見を頂戴した。「防災というのは常に危機感を持ち、常に最良を目指さなければならない。防災対策で満足してしまうことは油断を意味し、問題である。」と。満足の裏に隠れる慢心や油断を指摘した意見に、私は思わず膝を打った。
 「山梨県は自然災害が少ない」は、これまでの「統計」であって、未来への「保障」ではないことは、肝に銘じておく必要があるのかもしれない。

山梨総合研究所 研究員 大多和 健人