VOL.90 「46ドル」
日本の時間当たり労働生産性(就業1時間当たりの付加価値)は46ドルであるとの報告が公益財団法人日本生産性本部から発表された。これは米国の労働生産性の3分の2にあたり、OECD加盟35ヵ国の平均51.9ドルを下回って順位は20位。G7(主要7か国)でみると、日本は最下位であるという。労働生産性は仕事の効率を表す指標である。すなわち日本はG7の中で最も仕事の効率が悪い国ということになる。
折りしも日本では長時間労働が問題となっている。同じ付加価値を生み出すために、日本人は短時間で効率良く仕事ができず、無駄に時間をかけているのかと疑いたくなる。
長時間労働を是正するために、政府は「働き方改革」を行えという。この言葉は「使われる側」に対しての要求と私には聞こえる。「働く者が自分の働き方を改革しろ」という言い方だ。では働く者が働き方を変えるとはどういうことか。有効な変え方が果たしてあるのか。
言うまでもないことだが、仕事を効率よく回すには管理職の役割が重要だ。いかに仕事をスムーズに回せるかが効率に大きく関わってくる。働く側の「働き方改革」ではなく、働かせる側の「働かせ方改革」を行わなければ、職場の効率は上がらない。ひいては長時間労働も解消しない。
欧米では自分の専門以外の仕事は行わないということのようだが、対して日本人は総じて「何でも屋」だ。「何でも屋」は、ある意味ではマルチタスクで仕事をこなし、優秀な人材であると捉えられる反面、複数の仕事をパラレルにこなす局面が多く、優先順位を付けて効率よく仕事を回さなければ、すべてが虻蜂取らずになってしまう可能性もはらんでいる。
最も効率よく仕事がこなせる組織は、顧客の要求に応えられる専門性を持った人間の集まりである専門家集団であると私は考えている。専門性を持った人間の集合体が「何でも屋」の一人の人間のようにマルチタスクで仕事をこなすという形が理想だ。あの組織に頼めばどんな仕事でも高度にこなすぞ、かならずその道の専門家が出てくるぞ、となればこれほど理想的なことはない。
山梨総合研究所 主任研究員 小池 映之