これからの10年
毎日新聞No.506 【平成30年1月19日発行】
いよいよ「平成」も30歳になった。バブル崩壊、阪神淡路大震災、地下鉄サリン事件、長野オリンピック、日韓ワールドカップ、東日本大震災など様々なことがあった。日本という国自体も人口減少時代を迎えている。
これからの10年、いったい何が起きるのだろうか。
すぐに思い浮かんだのは東京オリンピックと平成の終焉、そして「2025年問題」であった。
2025年問題とは、約800万人いる団塊世代が2025年に後期高齢者(75歳以上)になることを指し、65歳以上の高齢者が日本の総人口の30%にあたる3,500万人に達すると見込まれている。
これに伴い、社会保障費(介護、福祉、医療、年金)の増大、高齢者のみの世帯の増加、認知症患者の増加、大都市の急激な高齢化などが起きるとされている。
一方、地方ではゆるやかな人口減が続くとされており、厚生労働省などが発表している資料をみても、大都市と比較して、あまり注目されていない。地方といっても、甲府市のような中核的な都市と、中山間部の姿は異なり、中山間部は集落消滅の危機的状況を迎えると言えるのではないだろうか。
中山間部に多い農村集落では、コミュニティと農業は深い関係にある。これは、水路などの共用部分の管理や、繁忙期の作業を共同で行ってきたことによる。機械化が進んだ現在においても、共同で行う労務は多くあり、まとめ役や労働力として団塊の世代が担っている役割は大きい。そして、多くのコミュニティでは団塊世代の次を担う世代が少ないことが多い。少ない人数で同じ面積の集落を維持しようとするのだから、個々の負担は重くなり、住民は疲弊しコミュニティは機能不全に陥ってしまう。コミュニティによって長年にわたり培われてきた文化や技術、景観は地域資源そのものであり、一度失われてしまえば簡単には元に戻らない。
「これからの10年」は「これまでの10年」とは比べものにならないほど社会は変化するはずだ。そして、「後世に残すべき価値あるもの」を取捨選択してゆくことが求められるのかもしれない。
(山梨総合研究所 研究員 大多和 健人)