高齢者を狙うのは、、、
毎日新聞No.507 【平成30年2月2日発行】
国立社会保障・人口問題研究所が先月発表した、「日本の世帯数の将来推計」によると、2015年の全国の総世帯のうち、最も多い家族形態は家族一人の「単独世帯」で1,842万世帯である。全世帯の3分の一を占めているが、今後も更に上昇し、40年には約4割に達する。一方、かっては全世帯の40%以上を占め、標準世帯とされてきた「夫婦と子供から成る世帯」は、15年の1,434万世帯(26.9%)から40年には1,182万世帯(23.3%)まで減少する。更に高齢化により、今後は65歳以上の高齢者の単独世帯が大きく増加し、40年には896万世帯と1.4倍に増える、と予測されている。
我が国では長く夫婦と子供を中心とする家族類型を前提としていたが、少子高齢化、晩婚化、非婚化などの社会的変化によって、単独世帯が中心になってきたことがわかる。現在の税制、年金制度や介護制度などの社会保障制度では、社会の変化に対応していくことが難しくなっていくだろう。伝統的な家族観という従来の観点に固執することなく、日本社会の現実に即した制度設計の見直しが急務である。
また、孤独死のリスクも高まる中、住民や企業、NPOなどを活用し、地域で見守り、支えあう仕組みが必要となる。例えば、介護サポートや買い物サポート、高齢者の見守りサービスの提供など、こうした高齢単身者の増加をビジネスチャンスとみる積極的な企業も見受けられる。
一方で、高齢者を狙った悪事もいまだ治まる気配はみえていない。いわゆる振り込め詐欺などの特殊詐欺の被害状況は、被害額こそ14年の約565億円をピークに減少しているものの、認知件数は依然増加している。手口も巧妙化しており、警視庁では今後の取り組みとして、高齢者対策の更なる浸透を掲げている。
先ほどの推計では、高齢者の単独世帯の増加が見込まれているが、その中でも75歳以上の単独世帯は40年に全世帯の約1割を占めると予測されている。今や振り込め詐欺は電話ではなく、劇場型と言われている。変わったことはないか、不審な人物の出入りはないか。地域の見守る目が必要だ。こちらも対策は待った無しである。
(山梨総合研究所 主任研究員 三枝 佑一)