VOL.92 「866人」
2月8日から2月25日まで、18日間にわたり開催された平昌オリンピックは無事にフィナーレを迎えた。今大会では金メダル4個を含む13個のメダルを獲得し、メダル総数としては過去最多、金メダルの数では1998年に開催された長野オリンピックに次ぐ2番目の結果となった。
このオリンピックで印象に強く残っている一言がある。フィギュアスケートの羽生選手が発した「私はオリンピックを知っている(以下略)」である。経験値の高さによるアドバンテージを語ったものであるが、私には選手生命の短さを感じさせる言葉でもあった。
現在、公益財団法人日本オリンピック協会では、アスリートが競技に安心して取り組める環境の実現を目指した、企業と現役アスリートのマッチングによる就職支援に加えて、現役を引退した後のセカンドキャリアについて、考える機会を提供するためのキャリアカウンセリングやセミナーを開催し、カウンセリングの実績(平成20年4月1日~平成28年3月1日)は延べ866名にのぼる。
また、プロ野球においては、毎年、約100人の選手が引退しており、プロ野球を運営する日本野球機構は、若手が多く参加するフェニックス・リーグにおいて、セカンドキャリアに関する調査を実施している。2017年の調査(回答者235人、平均年齢23.3歳)においては64%の選手が現役引退後に不安を抱えていることが明らかになった。不安要素としては、収入や進路、やりがいの喪失、世間体が挙げられている。一方、希望する進路は、高校野球の指導者、一般企業の会社員、大学・社会人野球指導者などの割合が高い。
さらに、プロサッカーのJリーグにおいても、組織内に人材教育・キャリアデザインチームを設けて、教育研修や就学支援、セカンドキャリア支援窓口業務などを行っている。
このように様々な組織でセカンドキャリアの形成について取り組みが進められているが、まだ十分とは言えない。スポーツ選手が子どもの夢や憧れであり続けられるように、スポーツ選手のキャリアデザインについて皆で考えてみてはどうだろうか。
山梨総合研究所 研究員 大多和 健人