冬季オリンピックを見て
毎日新聞No.509 【平成30年3月2日発行】
平昌冬季五輪が2月25日に閉会した。インターネット上では会場までのアクセスや宿泊施設不足、メイン会場の吹きさらし、スキージャンプ会場の強風などの問題が開会前から騒がれていたが、日本人のメダルラッシュ、閉会前日には、女子マススタートの高木菜那選手の金メダル、女子カーリングの銅メダルもあって、閉会式まで見てしまった人も多かったろうと思う。ちなみに日本が出場していない最終日の男子ボブスレー4人乗りでは、ドイツが圧倒的に強く、1、2位を独占、開催国韓国もアジア初の同率2位となり、会場も盛り上がっていた。
冬季五輪開催の大きな問題は、整備、建設コストはもちろんであるが、開催後の維持管理費がある。地域住民に人気の高いスポーツや各種ワールドカップなどで使われる施設はまだしも、五輪開催後に維持管理がなされ、利用されている施設は少ないのが現実である。
1998年の長野冬季五輪も、同様の問題を抱えている。ボブスレーやリュージュの会場だった長野市の市営競技場は年間2億円以上の維持管理費がかかり、国内競技人口は100人強と少ないため、来年からは製氷は休止、競技ができなくなる。1972年の札幌冬季五輪の手稲山ボブスレー競技場は2000年に廃止されている。
かつて、オーストリア・インスブルック郊外のイグルスという小さな村に宿泊した時、1976年冬季五輪に使われたボブスレーコースを目の当たりにした。牧草地にコンクリート製の曲がりくねったコースが撤去されずに残されていた。また、1992年のアルベールビル冬季五輪の数年後に、会場・施設を視察したが、伊藤みどりさんがフィギュアスケート女子シングルで銀メダルを取ったスケートリンクは室内テニス場として使われていた。施設運営者によると、最近若者に人気が出できた壁登り(現在のボルダリング)施設の整備を検討しているとのこと。困りものなのはフランスではマイナースポーツであるボブスレーコースやジャンプ競技場の活用策が見つからないとのことであった。
平昌冬季五輪のボブスレー競技の盛り上がりのシーンを見るにつけ、他国の自治体ながら、今後の課題にどう対処していくのか、地域財政や住民負担はどうなるのか、気になるところである。
(山梨総合研究所 調査研究部長 中田 裕久)