チャレンジの仕掛け


日新聞No.512 【平成30年4月13日発行】

 新年度を迎えるたびに「出会い」と「別れ」を経験する。今年は新メンバーを迎え入れる立場となったが、かつての自分の経験を思い出すと、彼らが早く職場に馴染めるために何が出来るだろうかと考える。
 「出会い」と「別れ」は、誰にも大なり小なりのチャレンジを求める。人間関係や生活習慣が変わることで、新しい環境に適応するために自分の力を示さなければならない。時には力及ばないこともあるが、たとえ力及ばずとも、自分の力を省みるチャンスとなる。その経験を、いかに自分の糧にしていくかがより重要となる。

 総務省が1月末に公表した人口移動報告によると、山梨県では17年連続で転出超過が続いており、特に20~24歳の年齢層が多いことから、就職や進学などを理由に転出している割合が高いと想定されている。
 この状況は、県内企業を悩ませる産業人材の不足に拍車をかけることから、いかにして定住人口を確保するかが課題とされている。しかし、暮らし易さや県内企業のアピールだけでは、転出超過の傾向は変わらない。
 では、どうすればいいのか。そこで、着目したいのが大阪大学の松村教授が研究する「仕掛学」である。これは「行動変化を強制するのではなく、魅力的な行動の選択肢を増やすことで目的の行動に誘うアプローチ」である。
 例えば、若者たちには新たな環境へのチャレンジを積極的に促し、自分の力を省みる機会、外部から故郷を見直す機会を推奨する一方、故郷で暮らす人は地域特有の魅力を磨き続け、それを転出者に直接届け続けることに注力する。
 そして、Uターン就職や起業・創業、二地域居住などに加え、県外に居住しながら山梨の魅力を周囲へ発信する宣伝係など、当人が自分で選べる、故郷のためにできる選択肢が多く用意されることで、将来的な転入超過への道筋が見えてくるのではないか。

 「かわいい子には旅をさせよ」という言葉がある。旅には必ず帰着点がある。それが、例え県外であったとしても、旅人は貴重な経験を得るほか、地域の魅力も磨かれ続け、発信され続けることで、将来の旅人が故郷での生活を選ぶ魅力的な行動の選択肢が増えていく、そんなチャレンジの仕掛けが求められている。

(山梨総合研究所 主任研究員 森屋 直樹