VOL.94 「2分」
米誌「ブレティン・オブ・ジ・アトミック・サイエンティスツ」は2018年1月25日「終末時計」を30秒進め、残り2分とした。
「終末時計」は、同誌の発行に関わる国際関係・科学・環境・安全保障の各識者グループの分析に基づき発表されている。核戦争などによる人類の終末を午前0時になぞらえ、その終末までの残り時間を「零時まであと何分」という形で象徴的に示している。人類滅亡の危険性が高まれば分針は進められ、逆に危険性が下がれば分針が戻される。
残り2分は1953年にアメリカとソ連が水素爆弾の開発を行っていた時以来のことだ。今回出された同誌の声明では「2017年、世界の指導者が迫り来る核戦争や気候変動の脅威に対し効果的措置をとらなかったことで、世界の安全保障状況は1年前よりも危険性が増した。これほど危険が高まったのは第2次世界大戦以来のこと」と分針を進めた理由が説明されている。特に北朝鮮による一連の核・ミサイル実験や、中国、パキスタン、インドの3か国の核戦力強化姿勢、トランプ米大統領によるツイッター投稿や声明が示した「予測不可能性」が世界の危機として挙げられている。
トランプ氏は、著書「タフな米国を取り戻せ」の中で「私が何をしているのか、または何を考えているのか、人々にはっきりと知って欲しくない。予測不可能であることが好きだ。それが相手を落ち着かない状態に保つ」と記述し、その意外性を自身の戦略的資産であると考えている。しかし、この「予測不可能性」は、決して戦略的資産ではなく、今まさに世界の脅威となっている。
この残り時間2分とされた1月25日から3カ月後となる4月27日、南北首脳会談が行われる。また現職米大統領として史上初となる北朝鮮指導者との米朝首脳会談も5月~6月に予定されている。
平昌オリンピックが契機とも考えられるこの南北及び米朝の融和姿勢は「終末時計」の時間を戻すことができるのか。
注目してみていきたい。
山梨総合研究所 主任研究員 小池 映之