国立大学法人の経営統合


日新聞No.514 【平成30年5月11日発行】

 昨年度末に、名古屋大学と岐阜大学を運営する二つの国立大学法人が経営統合する協議に入ることが報道された。中央教育審議会でも、それを可能にするための法改正について議論が進められているとのことなので、数年内には実現されるものと考えられる。
 実は、国立大学を法人化する過程で、一つの国立大学法人が複数の国立大学を運営する、アンブレラ方式についても議論されたが、最終的には法人と大学を一対一に対応させて、20044月に法人化がスタートした経緯がある。法人化の目的は2002年の閣議決定により「競争的環境の中で世界最高水準の大学を育成するため、「国立大学法人」化などの施策を通して大学の構造改革を進める。」とされている。その後、公立大学も法人化されたが、そのことについて大方の関心を引くことはなかったように思われる。

 筆者は、旧山梨大学評議員として、旧山梨大学と旧山梨医科大学の統合とそれに引き続く法人化という大変革を目の当たりにし、変革に伴う労力の大きさもさることながら、経営における理念やビジョンの重要性を再認識させられた。その後、しばらくして山梨大学法人の理事・副学長を務める機会を与えられ、大学という多様な価値観を有する教職員を一定の方向に向かって運営していくことの難しさも経験した。
 思えば、法人化を間近に控えて、医科単科大学と最小学部構成の総合大学が将来に対する危機感を共有できたことが統合に向かわせた要因であったことは間違いないであろう。国立大学法人化から15年が経過しようとするいま、国立大学法人が統合するという報道に接し、その決断に敬意を表したい。
 この決断の背景には、人口減少なかんずく大学の入学段階に当たる18歳人口が、2018年度(平成30年度)以降は、再び長期の減少過程に入り、2030年(平成42年)には101万人となることが予測されていることがある。それが、科学技術イノベーション活動を担う人材の量的確保が今後困難になっていくという危機感につながっており、否が応でも現場に変革を迫ることになる。

 「日本の運命を変えた七つの決断」(文春学藝ライブラリ)の中で、猪木正道は、指導者が正しい決断をする三つの条件として「正しい状況判断」「大局的な判断力」「自分の下す決断に対する責任感」をあげている。時代の大きい節目にある今こそ、指導的立場にある人々の一層の奮起を期待したい。

(山梨総合研究所 理事長 工学博士 新藤 久和