リーダーの果たす役割
毎日新聞No.517 【平成30年6月22日発行】
サッカーの祭典、ロシアW杯が開幕した。
この大会は、4年に一度の祭典として、全世界で延べ260億人ほどが視聴し、その視聴規模はオリンピックの5倍以上とも言われている。まさに世界最大の祭典である。
今大会は予選リーグから白熱しており、前回大会優勝国のドイツがメキシコに敗れ、優勝候補のブラジル、アルゼンチンが格下相手に引き分けたり、勝ちはしたもののフランスが大苦戦し、何よりコロンビアが日本に敗れるなど、強豪国が軒並み苦戦をしいられている。
当然、強豪国の選手と、強豪国に向かう各国の選手で体調のピークが違うことや、初戦の難しさはどこの国も同様であろうが、ここまで強豪国が苦戦する大会は、21回の大会の歴史の中でもはじめてではなかろうか。
これは、これまでの大会と比較して、強豪国に向かう各国が、事前に大量の情報を整理分析し、綿密な戦術を立て、強いモチベーションを持ちながら戦っているからであろう。
この綿密な準備(戦術)と選手のモチベーションを引き出す上で、サッカーは監督の役割が非常に大きい。同じ選手でありながら、戦術が変わることで、選手の求められる役割、果たすべき役割は変わる。監督が変わることで、戦術、選手のモチベーションが変化し、停滞していたチームが、同じチームであることが信じられないくらいに良い方向に劇的に変わったりする。サッカーほど、リーダーのマネジメント能力が問われるスポーツもないのではなかろうか。今回、日本代表はW杯まで2ヶ月というタイミングで監督を交代させた。
コロンビア戦での日本代表をみると、監督のマネジメントの重要度がにじみ出ていて、選手は2ヶ月前と比較にはならないほど、気持ちを出して戦っていた。
今回はサッカーの話であるが、リーダーの果たす役割は、どの組織でも同じであろう。戦術とモチベーションをどう導き出すのか。気持ちが出ている戦いは人の心を熱くする。今後、監督達はどのようなマネジメントを展開するのか。そんな視点も加えてW杯を楽しみたい。
(山梨総合研究所 上席研究員 古屋 亮)