スタジアム建設の地域活性化効果とは
毎日新聞No.518 【平成30年7月6日発行】
サッカーWカップが終盤を迎えているが、先日、県内への総合球技場の建設を想定した「スタジアムから生まれる新たな価値」と題するシンポジウムが開かれた。
政府の担当者による「スタジアム・アリーナ改革と地域・経済活性化」と題した基調講演のあと、Jリーグ経営者、地元経済界や団体の代表者が参加したパネルディスカッションが行われ、スタジアム建設への期待や地域活性化への可能性、他施設の運営例などが、それぞれの立場から語られた。また、運営経費に対する財政負担など懸念についても言及があった。
どんな事業にも、メリットだけでなくデメリットがあり、スタジアム建設でも、経済面を中心に波及効果が期待される一方で、想定を超える財政負担の発生もありうる。施設規模や付加機能、運営の巧拙により左右されよう。しかし、懸念があるからといって動かなければ、本来得られる効果は得られず、進歩はない。
フィールドを活用する競技場本体の収支だけで考えれば、一定の財政負担は生じるだろう。ただし、飲食店舗や会議室、子育て施設など付帯施設を含めたスタジアム全体でみれば、収支はどうだろうか。
ヴァンフォーレ甲府の活躍に期待を寄せる県民は多いだろう。県民だけでなく、県を超えた人々のつながりを実感できる「地域の自慢」である。ヴァンフォーレ甲府の活躍に、また、スタジアムの維持に、県民がそれぞれの立場で関与すれば、県民の郷土愛は深まり、絆も深まり、誇りを感じるようになり、スタジアムは絆を誇る場所となる。そうなれば、スタジアム建設は地方創生に一役買うことになり、地域の活性化効果は確かにあるといえるのではないか。
ヴァンフォーレ甲府のJ1での活躍が建設の要件というと酷かもしれない。それでも、ヴァンフォーレ甲府のJ1定着にスタジアムが必要ということであれば、建設の意義は十分ある。拙速に結論を出すのではなく、様々な面からの議論の深まり、県民の合意形成を期待したい。
(山梨総合研究所 専務理事 村田 俊也)