金融リテラシーの時代
毎日新聞No.519 【平成30年7月20日発行】
「山梨県は47都道府県の中で最も金融リテラシーが低い県である」。これは金融広報中央委員会が平成28年に行った金融リテラシー調査の結果である。この調査では金融リテラシーに関する25の質問の正答率で最下位、また金融トラブルの経験者の割合がトップということで、このような結果になってしまったようだ。
そもそも金融リテラシーとは何なのか。日本証券業協会のホームページには「金融リテラシー」とは、「金融に関する知識や情報を正しく理解し、自らが主体的に判断することのできる能力であり、社会人として経済的に自立し、より良い暮らしを送っていく上で欠かせない生活スキル」と記載されている。つまりお金の上手な使い方といえばいいのだろうか。私も金融広報中央委員会のホームページ上にあった金融リテラシークイズをやってみたが、これがなかなか難しい。
たしかにNISAやIDECOといった国が投資を推奨する制度を導入している昨今では、金融リテラシーの重要度が極めて高まっていると言える。星の数ほどある金融商品の中から、商品に関する知識や情報を正しく理解し、主体的に商品を選択する力が求められている時代となってきている。
しかし私は社会生活で求められる金融に関する知識を教えてもらった記憶はほとんどない。学校の授業はもちろん、親にもクレジットカードはこういうものだ、投資信託ってこんな商品だなんてレクチャーを受けてはいない。これだけ金融リテラシーが重要になっている時代に、「お金のことなどは、自分で学ぶものだ」という考え方はやや荒っぽくないだろうか。
そこで金融リテラシーや金融教育の重要性を周知するためにとられた施策のひとつが最初に紹介した金融リテラシー調査であった。結果はメディア等で取り上げられ、当時はかなり話題になったのを覚えている。
かつて甲州商人として莫大な財を築き上げた地元山梨の人のお金の使い方が下手とは全く思わない。しかしこの結果を現実と捉え、時代に求められている金融リテラシーを身につける教育が広がっていってほしい、と思う。
(山梨総合研究所 研究員 小澤 陽介)