県民こそ山梨ファンに


毎日新聞No.521 【平成30年8月17日発行】

 毎年、この時期になると1通のメールが届く。私が2年間派遣されていた会社のバドミントン部からで、山梨県で合宿をするための体育館の手配の依頼と合宿へのお誘いである。私はバドミントンの経験はほとんどなかったが、会社からのお誘いを受け入部させてもらった。合宿には毎回10名程度の部員が参加し、宿泊施設で1泊してから会社のある東京方面に帰っていく。山梨県での合宿開催は私が提案し、もう10年以上続いている。会社の方とはこの機会にしか顔を合わせることはないが、私は練習と夜の宴会に参加し、年に1度の交流を楽しんでいる。
 この会社に派遣されていた期間は、何かにつけて出身地である山梨県のことが話題にあがるため、私は改めて山梨県の特徴を勉強した。こうしたことを会社の方と話す中で、私は山梨県の良さを再認識することができ、山梨県に興味を持つ会社の方も増えていったように思われる。

 今、日本は人口減少社会に突入しており、特に人口減少が著しい地方においては「交流人口の拡大」が地方創生推進の大きな柱となっている。交流人口とは、外部からある地域を訪れる人口のことで、国や地方では、交流人口の拡大のため様々な取り組みが行われている。
 こうした取り組みとして、県外に向けて観光情報等を大々的にPRして観光客を招き入れることも必要であるが、県民自身が山梨県の良さを認識するとともに、県外に出て現地の人との交流を楽しむという観点も必要であろう。県外から本県を見たり、県外の人と話をしたりすれば、本県の良さを再認識できるし、それを伝えることで相手方も山梨県に興味を持つようになるのではないか。

 人口規模の小さい本県であるが、決して引け目を感じる必要はない。東京に隣接しながら自然環境が良く、移住人気が高いことや、健康寿命が日本一など、自慢できることがたくさんある。住民登録をしてあるだけの「県民」ではなく、山梨県のいいところをたくさん知っている、熱烈な「山梨ファン」としての県民となって山梨県を発展させていってほしい。

(山梨総合研究所 主任研究員 伊藤 賢造