VOL.98 「1億円」


 「億り人」という言葉をご存知だろうか。
 実用日本語表現辞典によると、「株式投資などで億単位の資産を築いた人・大もうけした人を指す俗な言い方。2008年の映画『おくりびと』をもじっている。」という内容であった。一般的には株式投資などで1億円以上の金融資産を築いた人のことのようだ。最近の好況な株式市場を受け、この「億り人」の数は増加傾向にあるという。2018627日の日本経済新聞電子版にも「億り人の極意 相場急変こそチャンス」という記事が掲載されており、一般的に浸透してきた言葉とも感じる。

 「億り人」は日本にどれくらいいるのだろうか。野村総合研究所が実施した富裕層アンケート調査での推計によると、純金融資産保有額が1億円以上の世帯は約120万世帯であり、日本の全世帯5,290万世帯から考えると、わずか約2.3%のみとなっている。本当にごくわずかな存在であるが、100世帯につき2世帯と考えると、意外に身近な人も「億り人」なのかもしれない。
 そもそも1億円を手に入れるにはどうすればいいのだろうか、ここで考察してみたい。まず毎月一定額を積み立て貯金するケースで考える。年利0%で計算すると、毎月10万円積み立てしたとしても、83年以上かかる。私たちが出生したときから毎月積み立てしたとしても、1億円貯金できたときには83歳になっている。そもそも生まれたときから毎月10万円貯金できる人などほとんどいないので、現実的ではない。もし期間30年で考えるなら毎月約28万円貯金する必要がある。30歳から貯金をはじめ、60歳まで毎月かかさず28万円貯金するということであるが、一般的には難しい話だ。
 では「億り人」のように株式市場の力を借りた場合はどうだろうか。東証株価指数TOPIX20年間平均リターン3.4%(非課税)で考えた場合、毎月約17万円を30年間積み立てると達成できる。やはり現実的ではないような気もするし、株式市場には相場の上がり下がりがあるので、平均リターンが保証されているわけではないが、それでも年利0%の積み立て貯金だと28万円必要であることを考えると、やはり複利の力は大きいことを感じる。

 NISA(少額非課税制度)やiDeCo(個人型確定拠出年金)の創設など国が投資を後押ししているこの時代、「億り人」を目指す人は今後も増えていくのはないだろうか。

(研究員 小澤 陽介)