生涯を賭ける
毎日新聞No.529 【平成30年12月21日発行】
筆者には、あるフレーズが強く印象に残っている。それは、昭和町にある常永ゆめ広場という公園の記念碑に刻まれている「生涯を賭ける」というフレーズである。この公園は昭和町で行われていた常永土地区画整理事業(以下、本事業という。)の一環で建設された。本事業の概要は報告書によれば次のようなものである。
昭和町では平成12年に策定した都市計画マスタープランに基づき、土地区画整理事業により、常永地区の計画的な大規模開発を行った。総事業費は105億円、施工面積は63.4haと組合が行った土地区画整理事業の中では山梨県最大規模のものである。本事業は平成29年度に完了となったが、前昭和町長が平成11年の町長選挙の公約として本事業を掲げてから、約18年間の長期に渡り、この事業は進められてきた。
「平成19年2月、当地の大型店舗立地計画に対する周辺地域より大反対運動が起こり、店舗面積を40%縮小する事態にも遭遇した。直面する厳しい環境の中で準備委員会の役員は連帯保証人となり、高額な資金の借入を決断するなどまちづくりの継続に生涯を賭けた大変な努力がなされた。」。この事業により誕生した常永ゆめ広場の記念碑にはこう刻まれている。
長い年月や周辺地域の反対運動もさることながら、この連帯保証という言葉には非常に重みを感じる。具体的に連帯保証となった金額はわからないが、総事業費105億円から考えれば、住宅ローンの金額で済む話ではないだろう。本事業の連帯保証人となった役員の方々は、この事業に失敗したら、全財産を失う可能性すらあったはずだ。それでも町の発展のために、すべてを賭けた、まさに「生涯を賭けた」ことになるのではないだろうか。本事業に生涯を賭けて取り組んだ方々がいたからこそ、今の昭和町があることを、みなさんにも知っていただき、また機会があれば、常永ゆめ広場にある記念碑を一読いただければと思う。
本事業は、公共施設の整備と地区計画制度を活用した快適な住環境の形成により、都市機能の向上とまちの活性化に貢献したということで、平成30年度「まちづくり功労者国土交通大臣表彰」を受賞した。「生涯をかけた」方々の努力が結実したのだと思う。
(山梨総合研究所 研究員 小澤 陽介)