スキルマップの重要性
毎日新聞No.530 【平成31年1月18日発行】
「人」、「もの」、「金」、「情報」は組織を運営する上で重要な資源である。この中で、最も資源としての管理が難しいものが「人」である。ISO9001では「人(=組織構成要員)」の能力管理にスキルマップを活用する。
スキルマップは「業務遂行上必要なスキルを洗い出し、要員一人ひとりの持っているスキルを見える化した表」である。組織内の要員のスキルの状況を把握し、計画的に人材を育成するために必要不可欠なツールである。
組織において要員のスキル向上は重要なテーマである。ISO9001の要求事項においては、スキルが十分でない要員を業務につかせることを認めていない。
組織の作り出す製品やサービスの品質を保証するためには目的の品質を作り出す能力を備えた要員が必要となる。そのためにスキルマップによって組織内のスキルの可視化を図り、組織単位での人材育成を行うことが重要となる。これらの取り組みはひいては従業員のモチベーションの向上にもつながっていく。
昨今の生産人口の減少やグローバル化による競争の激化などの社会的背景から、人材育成を最優先の経営課題として取り組む企業が増えている。そのような企業では、計画的な人材育成を行うためのツールとしてスキルマップの導入が進んでいる。
従来から導入されていた製造業はもとより、IT企業やコンサルタント業などの技術系企業にもスキルマップ導入が進んでいる。業種がサービス業に近づくほど品質保証における属人的な能力の重要性が高まる。そのような業種では、人材育成はより重要な課題となる。
AIによって約半数の職業が自動化されるとの予測もある中、今後社会全体でより付加価値の高い仕事を行う能力が求められていく。スキルマップと教育システムを連動させ、ICTが活用できる人材など、これから必要とされる人材の育成を進めることが、ひいては地域社会の活性化につながっていくと考える。
(山梨総合研究所 主任研究員 小池 映之)