Vol.246-1 移動通信業界の変化と取り組み


()ドコモCS 山梨支店 支店長 平口 暢子

はじめに

 2019年、移動通信業界にとって大きな変化が起こる年が始まりました。2018年から継続的に議論されている携帯電話の通信料金と端末代金の完全分離、そして新しい移動通信事業者の新規参入、さらに第5世代移動通信サービスのプレサービス開始が予定されています。折角の機会ですので私たち移動通信事業者の取り組みについてご紹介させていただきます。

 

携帯電話料金についての議論

 2018年8月下旬、菅官房長官から「日本の携帯電話料金は4割下げられる」との発言があり、これをきっかけに、内閣府の「規制改革推進会議」、総務省の「モバイル市場の競争環境に関する研究会」及び「ICTサービス安心・安全研究会 消費者保護ルールの検証に関するWG」での議論が始まりました。
 当初は通話だけだった携帯電話がデータ通信もできるようになり、その後iモードというインターネット接続サービスが開始され、携帯電話は徐々に情報端末の役割が大きくなってきました。ネットワークの面では、アナログ方式からデジタル(PDC)方式、第3世代(3G)、第4世代(LTE)と進化を遂げており、通信速度も3Gが始まったばかりの384Kbpsから1,288Mbpsと、約20年で3,000倍以上も高速化しています。いまや携帯電話の普及率は100%を超えていて、移動通信サービスは最もユーザーの関心の高いサービスの一つとなりました。
 音声通話料金は、20年前の1998年には10秒10円と高額でしたが、現在では音声通話料金の定額プランが設定されるまでになりました。データ通信についても、2010年にパケ・ホーダイダブルの従量部分は0.084円/パケットでしたが、今では一番割高のプランでも、約0.00035円/パケット(2,900円/Gバイト)、一番データ量が多い「ウルトラシェアパック100Gバイト」で約0.00003円/パケット(25,000円/Gバイト)に低減しています。

 

NTTドコモのお客様還元の取り組み

 料金プランは、競合他社との関係もあり、当初のプランから様々なプランを追加し、お客様にメリットがあるよう見直しているものの、料金プランが複雑になってしまい、お客さまからわかりにくいとの声が聞かれるようになりました。それをきっかけとして、ドコモは決算発表で料金プランの見直しに言及いたしました。
 携帯の通信料は、図1に示す様に、①基本プラン(音声プラン)と②パケットパックと③インターネット接続サービスで構成されています。

図1 携帯電話の料金のしくみ  

 

 音声通話については、定額サービスの「カケホーダイ」と1回の通話が5分以内の通話であれば、定額となる「カケホーダイライト」が主流です。着信がメインで通話が少ないお客様には、「シンプルプラン」をご用意しております。
 次にデータ通信のパケットプランですが、こちらは単身向けプラン(「ウルトラデータL/LLパック」や「ベーシックパック」」とパケットを分け合えるファミリー向けのシェアプラン(「ウルトラシェアパック100/50/30」や「ベーシックシェアパック」)を設定しております。
 携帯端末の高機能化に伴い、携帯端末が高額になってきており、⑥の割引サービスの一つとして、2年契約を条件とした「月々サポート」で毎月の料金の割引を行っています。今回、この「月々サポート」が端末を買い替えるユーザーに対しての割り引きであることから、買い替え頻度によって不公平が生じていると指摘されており、端末と通信料の完全分離が求められています。

 また、通信料金面だけではなく、携帯ショップなどでの手続きに時間がかかりすぎることも指摘されています。他社との競合により料金プランが複雑になったのも要因の一つですので、わかりやすい料金プランにすることで、手続き時間の短縮に繋がると思っております。今年4月以降にどのような料金プランが発表されるかご期待ください。
 併せて、ドコモショップでの予約枠を拡大し店頭での待ち時間を短くするなどの取り組みをすすめ、お客様の店頭でのご負担を軽減させるとともに、お客様の生活を豊かにするためのお手伝いをさせていただくことに注力して参ります。 

 今年2019年は、新規事業者が参入し、市場の競争激化が予想されます。ドコモはお客様の通信事業以外のスマートライフ領域に力を入れ、発展を目指していきます。
 特に2019年は消費税増税をきっかけとしたキャッシュレス化が進むことが予想されます。ドコモもクレジットカードサービス(dカード)の他、ドコモの決済基盤を活用した「d払い」(携帯料金と一緒に請求)の普及も目指しています。その結果、ドコモから請求されるのは通信料だけでなく、d払いでお買い物された代金も含まれてきますので、ドコモからの請求額トータルでなく、通信料金がいくらかかっているのかをご確認いただくことが重要です。

 

5Gでより豊かな未来へ~beyond宣言~

 ドコモは、2020年のさらにその先を見据え、ビジネスパートナーの皆さまと共にお客さまの期待を超えることにより、「お客さまへの驚きと感動の提供」、「パートナーとの新しい価値の協創」の実現をめざします。そのために、これまでの自分自身が変わり5Gで豊かな未来を作っていく、という意味を「beyond」に込めました(図2)。
 お客さまには「お得や便利」そして「楽しさ・驚き」、満足・安心といった価値や感動を、パートナーの皆さまとは、「+d」の取組みを通じて産業への貢献、社会課題の解決、そして商流拡大といった新しい価値の協創を実現していきます。

図2 ドコモのbeyond宣言

  

 

 その実現に向けた取組みとして「beyond宣言」を定めました。具体的な6つの宣言を以下に示します(図3)。

 

図3 ドコモの6つのbeyond宣言 

 

第5世代移動通信(5G)サービス

 これまで、携帯電話のネットワークは10年周期で大きな進化を遂げてきました(図4)。LTEの導入から約10年が経過したこともあり、第5世代と言われる5Gのサービスを2019年度のラグビーワールドカップよりプレサービスとして開始し、2020年に本格的に提供する予定です。
 5Gは、ピークレート20Gbpsの「高速・大容量」によって、 4K/8Kの高画質の動画ストリーミングやAR/VRによる新体感サービスを可能にし、無線区間の遅延が1ms以下となる「低遅延」により自動運転や遠隔医療で活用され、またこれまでにない100万デバイス/㎢の同時接続となる「多数の端末との接続」を可能とします。ドコモでは、スマートシティや農業や産業、まちづくりへのICT活用に資するなど、5Gの特徴を活かしてより社会を便利に豊かにすることを目指しています(図5)。
 そのためには、これまでより幅広いパートナー様と一緒に、これまでにない新体感サービスの創出や社会課題の解決に取り組むことが重要であり、ドコモは2018年より『5Gオープンパートナープログラム』のパートナー様を増やすとともに、パートナー様と東京・大阪・沖縄・グアムの5Gオープンラボを活用し、5Gの技術検証を行っております。
 図6は、高精細診断映像を5Gで伝送することで高度な遠隔診療の実現を目指したものです。
 その他、協創での事例の一部は、以下のサイトで動画をご視聴できます。(https://www.nttdocomo.co.jp/corporate/technology/rd/tech/5g/5g_movie/index.html
 2020年の5Gサービスの本格的な開始に向け、今後もより幅広いパートナー様と社会課題を解決すべく取り組んで参ります。

図4 移動通信技術の進化

図5 5Gがめざす世界

図6 5Gサービスでのパートナーとの協創事例(高精細診断映像による遠隔診療システム)