触れる機会を大切に


毎日新聞No.532 【平成31年2月15日発行】

 子どもの体力低下傾向が言われて久しい。
 全国体力・運動能力、運動習慣等調査(スポーツ庁)によると、平成29年度における小学校男子、女子の体力合計点は前年より上昇しており、この10年間でみると、横ばい傾向から上昇傾向にある。しかし、30年の期間でみると、子どもの体力は、低下傾向であることは間違いない。

 文部科学省では、体力は、人間の活動の源であり、健康の維持のほか意欲や気力といった精神面の充実に大きくかかわっており、豊かな人間性や自ら学び自ら考える力といった「生きる力」の重要な要素となるものである、とまで言っている。健全な育成には体力は欠かせない。
 子どもの体力低下の要因は、外遊びできる場所や遊び相手が減ったこと、SNSやゲームなど自宅遊び増えたことなどが挙げられている。運動に触れて、喜びやワクワク感を得られる機会が減少すれば、率先して運動する機会は失われる。
 こうした中、本県では、小学生1~3年生の250人を対象として、野球、ラグビー、バスケ、自転車、陸上、サッカーで山梨にゆかりのあるレジェンドアスリートが、直接子ども達を指導するスポーツイベントが開催された。
 それぞれ1種目を体験する機会はあるかもしれないが、全ての種目をしかも1日で、さらにその道の有名アスリートから直接学べる機会などそうあるものではない。
 その道のプロが、持つ技のすごさを披露し、指導しながら入り口やその先まで案内してくれる。従来からやっているスポーツを学び、はじめて経験するスポーツに触れられる喜び。250人の全て児童が運動を得意ではないだろうし、運動好きでもないだろう。しかし、皆がキラキラした目で楽しみながらも真剣に身体を動かす姿勢をみていると、子どもの体力低下の要因は、子どもに運動する楽しさを伝えきれていない大人にも原因がある気がしてならない。
 レジェンドアスリート、スタッフも連携を取りながら楽しそうに子ども達と接していた。

 スポーツを通じて、何かに熱中することや仲間の大切さを教え、人への感謝を忘れない。大人が子どもに伝えられる大切な想い。スポーツは本当に良いものだと感じられる一日だった。

(山梨総合研究所 上席研究員 古屋 亮)