ゴールデンウィークは山梨県立美術館へ


毎日新聞No.537 【平成31年4月26日発行】

 明日からゴールデンウィークが始まる。最大で10連休の長期休暇となるため、国内外を問わず旅行・外出の予定を立てている方も多いであろう。一方で、この期間の混雑、料金の高さ等により、山梨県内や近場でのレジャーを中心に考えながらも、特に予定を立てていない方も多くいるはずだ。10連休を、何もしないでいつの間にか終わってしまったと後悔しないように、近場の外出先として候補に入れて欲しいのが山梨県立美術館である。
 昨年10月後半から今年の1月20日の約3ヶ月、東京都美術館ではムンク展が開かれた。ノルウェーから運ばれてきたムンクの代表作「叫び」を鑑賞するため、休日には1時間以上の待ち時間となるなど、3ヶ月間で66万人の入場者数を記録した。東京都美術館では、その前年にゴッホ展を開催し37万人、近隣にある国立西洋美術館ではプラド美術館展を開催し29万人など多くの集客を誇っている。

 山梨県には、ミレー美術館と親しまれている山梨県立美術館がある。『種まく人』、『落ち穂拾い、夏』をはじめとするミレーの作品が多く所蔵されている。ミレーの絵画は、ムンクやゴッホ、モネ、ピカソ等と並び、教科書に登場する絵画であり、その絵画が山梨県立美術館で公開されている。
 山梨県出身者でノーベル生理学・医学賞を受賞した大村智先生は、その著書で自分を育んだものが小さな自然あふれる故郷と愛する芸術として、幼少期から本物の芸術に触れる機会の大事さを説かれている。本県には本物の芸術がすぐ横にある。

 山梨県立美術館は、昭和60年には60万人近い入場者があったが、ここ2年は15万人程度の入場者数で、長期にわたり減少傾向となっている。なぜここまで減少してきたのか。県民がこの美術品を見て、その良さを感じ、外部に発信できていないことも要因ではなかろうか。
 素晴らしい宝物がふらりと訪れることのできる距離の美術館に収蔵されている。とても贅沢なことである。現在は特別展で「デザインあ」展を開催している。春の陽気の中で、家族みんなでふらりと美術館を訪れて、ミレーの世界観をはじめとする多くの芸術作品に触れてみるのも良いのではなかろうか。

(山梨総合研究所 上席研究員 古屋 亮