Vol.250-1 改正入管法に則した優秀外国人人財の受け入れと人事政策


一般財団法人日本礼儀作法協会 副理事長兼北関東教育本部長代理
(長田広告株式会社 人材派遣業担当部長)
白石 猛
【システム】

1.外国人への日本の教育事業で、人財不足解消、文化交流、郷土活性化を目指す

 私たち日本礼儀作法協会では、アジアの提携先大学・短期大学で、日本に関する教育事業を実施しています。
 教育事業の内容は、

(1)「日本語能力 N4、N3以上」
(2)「礼儀作法・ビジネス実務マナー 初級」
(3)「職業専門知識教養講座」

となっています。
 これらの教育事業を通して、日本でインターンシップや就業を希望する学生たちが日本で役立つ知識やマナーを学んでいます。
 この制度では「大学の単位」として、就労型学習(全日型)を可能としています。この制度で学んだ学生たちは、人財確保や事業所の将来を展望する方々にとって、とても貴重な人財になると確信しています。

 現在、宿泊業や介護施設において学生のインターンシップを受入れていただいていますが、最初は外国人であるということで受入れることに不安を持たれることもありましたが、接していくうちに、彼らが前向きで一所懸命であり、分からないことは分かるまで確認すると、担当の皆様からの評価が良い方向に変わっていくことが多くあります。また、職場も元気に明るくなり、雰囲気が変わるとの評価もいただいています。
 インターンシップを受入れる際には、事前に現地での面接を行っています。また提携先大学の関係者が訪日し受入先やインターンシップ生との面談を行うことで、受入れ先にも安心していただけるとともに、文化交流が広がる効果もあります。

2.日本礼儀作法協会が育成する人財の特徴

(1)全ての人財は提携大学(ベトナム・フィリピン・カンボジア・台湾など、契約した13校)の現役の大学生です。各々の大学において「日本に興味がある」、「日本に行きたい」、「日本でもっと学びたい」、「日本で働きたい」、「日本で夢を叶えたい」と願う学生を募集し、前出の当会特別講座を大学の授業とは別に約10か月にわたり受講し、一定のレベルの資格(日本語の国家資格N4以上・マナーの初級資格)を取得した学生です。

礼儀作法の講義の中には、日本の習慣・しきたり、名刺交換も

(2)インターンシップの原則(入国管理局提出書類等)により、各々の専門分野(例えばサービス業は日本語学科等、介護関連は看護・介護等、エンジニア関連は自動車学科等、IT関連は情報通信技術学科等)を学ぶ学生ですので、携わる職業においてミスマッチがありません。

(3)インターンシップの期間中(10か月を予定)を学生と企業とのお見合い期間として、未来の人財育成(人事政策)の観点から慎重な人選をして頂けます。選ばれた学生は、一旦帰国後、卒業して特定技能1号または高度人財として再来日し、3年・5年・就職等長きにわたり日本企業の人財となって頂けます。
※このスキームこそが日本国家の推奨する外国人人財受入れの最高峰であると確信しています。

(4)学生は、来日後も大学等(教育省・労働省・警察省)のモニタリング対象として、常に連絡を取り合いますので、身元が保証されていることはもとより、学生に関する良い評価は、受入れ企業のイメージアップにもつながり、政府関係を通じて母国全土に波及していきます。

インターンシップ生 入社式

(5)当協会オンリーワンであるシステムの最大の特徴として、学生や未来の優秀人財は(日本の国家が憂うる)送り出し機関・受入れ組合などを介することに縛られず、借財を一切背負うことなく、極めて業務に集中しやすい環境で自己研鑽に取り組むことができます。
※当協会においては、教育にかかる費用を重点に受入れ企業の理解を得て、賛同企業(企業会員契約)と共に未来の人事政策に共に取り組む形態をとっております。

3.時代背景~外国人人財を採用する意義~

 現在、ベトナムにおける大学(短期大学含む)進学率は約20%です(ちなみにフィリピンは約30%、ミャンマーは約15%、台湾は約90%、日本は約60%となっています※)。ベトナムの進学率は、日本の1960年代、いわゆる団塊の世代の進学率に相当するものです。
 ご存じの通り、この世代の人たちが、日本の高度成長期を支え、そして現在に至るまで日本経済のけん引役として活躍されています。
 殊に、ベトナムにおいては、ここにきて総人口が1億人に極めて近づき、経済成長率も7%を上回り、日本の高度成長期を見るような状況です。
 この国の偉大なる指導者、ホーチミン初代首席が言われた「若者の教育無くして、国家(民族)の発展なし」との言葉は、国全体で教育に力を注ぎ、そして国際社会の一員となるべく先進国からの学びを積極的に取り入れる姿勢を示しています。
 このような時代背景の中で、かつての日本のエリートの卵と同等の人財を企業成長の核に据えることのできる絶好の機会を与えることができるものと確信しています。
 外国人人財が、日本人スタッフと共に成長し、企業を支える人財となりうる千載一隅の大チャンスであると考えています。
(※総務省統計より引用)

老舗旅館でのインターンシップ

4.日本における人財雇用の現況

 企業の成長・未来を考えた時、「人財無くしては、企業の行く末はない。」と言われます。それは、企業というものが、「人と人が寄り添って組織を形成し、その組織が社会の役に立つことで成り立つ」という原理原則に拠っていることが恒久に変わることはないからです。
 その組織の目指すベクトルの方向の一致・士気の高さ・機能性の高さ・経営者(リーダー)の考え方・・・諸々において、その組織の特性が現れますが、そこに人がいることは、不変の事実です。
 AIが発達し、無人化可能な部分はより合理化が進み、人間の能力を超えた計算力・応用力・末来予想力(過去事例からの分析等)はこの「令和」の時代に大きな雇用形態の変化をもたらすに違いありません。
 それであるからこそ、AIを寄せ付けない圧倒的な人間力を有した人財の育成が急務となります。感性・優しさ・思いやり・気づき・向上心・表現など。人が人であるが故の人らしいものを、企業の営みを通じて取り入れて養っていく姿勢が、これからの企業の人財育成に最も大切な要素ではないかと考えます。

5.習慣・生活環境・DNA

 私自身、50の手習いで礼儀作法協会と出逢い、接し、日々至らぬ点を振り返りながら学ぶことを喜んでおります。この出逢いには本当に感謝しております。

 礼儀作法とは、簡単に言うと「礼」+「儀」+「作法」です。
 礼は思いやり・気遣い・丁重さ。儀は人に嫌な思いをさせないこと。
 まず基本はここにあります。つまりモラルの高い民族である私たちが奥に秘めたるDNAです。震災の最中、行列を作って支給を分かち合う、また弱い者・お年寄りを優先しそれを常とし助け合う、そして自己主張を慎み、他の生命体を優先することを美徳とする。
 日本人に生まれて、本当に良かったと実感する瞬間です。日本の風土全体が、自然にこのような社会を構築する遺伝子を有しています。
 そして作法。作法は形・ルールです。
 正に礼儀(優しい心)を作法(形に表現)し相手に伝える。心を形に表すことが礼儀作法です。

 心を相手に表現して、初めて礼儀作法となります。秘めているだけでは、伝わらないことも、また自分自身がどうというよりも、相手がどう受け止めるかという基本的な事が礼儀作法なのだ、という事を改めて実感する日々です。

 私たちは、日本の風土に生まれ育ち、家庭において、学校において、そしてスポーツや武道・文化活動を通じて、また社会に出て会社という組織の中で、自然に礼儀作法を学んで来たように思います。

 現代の日本社会においては、豊か過ぎる社会環境のもと、核家族の常態化、ゆとり教育、働き方改革、過剰なコンプライアンス対応等々の社会状況の中で、NEET(ニート・高齢ニートも含め)が100万人以上(※)存在し、労働人口の不足の要因の一部になっている事は、間違いのない事実です。また、きつい・汚い・危険な職種への応募は非常に少なく、就労3年未満の離職率も高水準となっている状況も現実です。(※総務省統計より引用)
 東南アジアの各国では、まだまだ、大家族で父母・祖父母と暮らしを共にし、また都会においても家賃高騰の中、複数の友人らと生活を共にしています。このように集団生活が常で、生活環境そのものが他人に気配りをしていかなければならない状況で生活していることは確かです。
 この東南アジアのポテンシャルに、日本で就労するためのエッセンス(日本語・マナー・職業訓練)を約1年にわたって習得した人財は、現在の日本人の中でも光る人財となる可能性を高く持っていると考えます。

6.実体験レポート~ベトナム人社員と共に働いて~

 かくいう私どもも、本年よりベトナム人スタッフ(女性社員1名・男性社員1名)を採用し、共に働いています。
 入社前は、年齢層も高く、古くから定着率の高い組織でもあるため、日本人スタッフから不安の声が上がっていました。
 それが、現在では欠かすことのできない戦力として活躍しています。
 従順で、テキパキと作業を進め、分からない日本語だけでなく、今行っている仕事の意味も質問してくれます。
 今、自分自身が何をどうして、人の役に立つことをしているのかを考えてくれています。彼らには本当に心の底より、感心しております。
 当然、個人差はあるのでしょうが、組織に生きてきた私自身、その姿勢に新鮮な感動すら覚えます。当然、周囲の皆様も刺激を受け、組織全体に潤いと活気を日々与え続けていることに、間違いありません。

 多くの日本企業におかれても、是非にこの体験をお勧めしたいと切に思う次第です。

7.山梨県の未来創生に

(1)県民が豊かに
(2)外に打って出て世界の富を山梨に
(3)次代を担う若者に投資を
(4)医療・介護・子育て施策を実行
(5)日本一快適で素敵と言われる県を目指す

 これは知事の公約です。国家が全国各地で抱える問題がこの山梨県に集約され、その解決策が一つの大きな規範となっていくことの期待が大いにあると考えます。
 甲州財閥が全国に飛び出し各地で築いた功績が、今の山梨県の基であるのであれば、その精神をもう一度振り返り、先人の背中を追う開拓者の精神で、新しい取り組みに挑戦していく事で未来が拓けてくると信じて疑いません。

・山梨県のポテンシャルを活かし豊かさを増幅させる
・観光資源の最大限の活用
・世界との繋がり
・人財育成
・専門職への人財投資・人口流失転じ人口増幅
・日本の模範たる住みやすく・豊かで快適な県

 どの項目にも、外国人財と共にみる、新しい山梨県の、また日本国家の目指す方向の鍵があると確信します。