VOL.108 「2984万3274円」
3月8日に発表されたランボルギーニ社の新型「ランボルギーニ・ウラカンEVO」の日本価格は2984万3274円であるという。注目したいのはドライバーの次の動きとニーズを予測し車両制御を行う「フィードフォワード制御技術」が盛り込まれている点だ。
フィードフォワードとは、フィードバックの対義語である。人は自分自身の問題点を気付いていないことが多くあるため、周囲からフィードバックという形で改善点を指摘してもらう。ところが、若いうちは素直に周囲の言葉に耳を傾けられるのだが、年齢を重ねるに従って受容性が鈍くなる。周囲もフィードバックすることによって悪感情を抱かれるのではないかとの恐れからだんだんと口に出さなくなる。
フィードフォワードは、自分が将来こうなりたいという予測や希望を先に持ってくる。自分の望む方向に行くためにはどうすれば良いかという建設的な意見を周囲に求めるのである。
例えば「統計的な能力が足りない」という状況に対して「あなたは普段勉強しないから能力が身に付かないんだよ」と指摘するのがフィードバック。一方、「統計的能力を身に着けたいんだけどどうすればいいかな?」という将来への願望に対して「この本でこういう内容を勉強したらどう?」と伝えるのがフィードフォワードである。
フィードフォワードで重要な点は、将来こうなりたいという願望を持っているかどうかだ。自分はこうなりたいという方向性がなければフォワードが見えないためフィードフォワードできない。
ランボルギーニ社は「世界一の車両制御を行いたい」との願望を持っていた。その願望にフィードフォワードした結果、「ランボルギーニ・ウラカンEVO」は「車両のフィードフォワード制御」という技術を搭載することが可能となった。
大切なことは「どうなりたいか」という思いを持つことだ。その結果が2984万3274円なら安い買い物だ。
山梨総合研究所 主任研究員 小池映之