フォトロゲイニングの魅力


毎日新聞No.542 【令和元年7月5日発行】

 フォトロゲイニングという競技をご存知だろうか。2005年頃から始まった日本発祥のスポーツと言われ、主催者から配られる地図をもとにチェックポイントを回り、得られる得点を参加者で競い合う競技である。参加者は、地図をもとに一定時間内に効率よくチェックポイントを回るための作戦を立ててからスタートし、チェックポイントに到達した記録として写真を撮影していく。
 チェックポイントには寺社仏閣や名所、店舗などが設定されることが多く、大会によっては地元にあるお店で買い物をすれば得点がもらえたり、バス、電車などの公共交通機関の利用も認められるなど、地域の賑わい創出にもつなげられることから、全国各地で開催されている。

 私はこの春、5歳の息子と2人で100名規模の県内の大会に初めて参加し、点在する商店や山間地にある名所を、バスを利用しつつ歩いて回った。すぐに「もう歩けない」と弱音を吐く息子が「早く次に行こう」と積極的に歩くなど、普段見られない姿を見ることができた。競技中は、バス停でバスを待っていると住民の方が「もうすぐ来るよ」と声をかけてきてくれたり、農作業中の方にチェックポイントを尋ねると親切に教えてくれるなど、住民とのふれあいも楽しむことができた。
 フォトロゲイニングは参加者・主催者・開催地から成り立つスポーツであり、開催地の住民も要素の一つとなる。住民の役割は、あるときは道案内、あるときは生活風景の一部などさまざまで、住民の役割次第で参加者の競技への感想も変わり、楽しい思い出になるかどうかにまで左右することもあるだろう。
 マラソンと違いどのようなルートを参加者が通過するかは決まっておらず、いつ住民に出番がやって来るか分からない。また競技自体の住民への浸透も進んでいなかったはずであるが、筆者が受けた住民の何気ない対応は、筆者をとても温かな気持ちにしてくれた。

 山梨県には、豊かな田園風景があるだけでなく、人間味豊かな住民が多く住んでいる。この新しいスポーツが普及するとともに、地域の豊かさの再発見につながることを期待したい。

(山梨総合研究所  主任研究員 伊藤賢造