パブコメに清き一票を
毎日新聞No.543 【令和元年7月19日発行】
パブリックコメント(以下「パブコメ」)という制度がある。国や地方自治体の施策の根拠となる行政計画やガイドラインの原案をウェブサイト等で公表し、市民から意見を寄せてもらう意見公募制度だ。
行政は、まちづくりの基本となる「総合計画」を筆頭に福祉、教育、産業・インフラ整備など、さまざまな分野で3年、5年、10年を期間とする計画を策定している。担当課が中心となって国の方針、首長の公約、当該自治体の上位計画、他計画、前計画との整合性を踏まえて原案を作成し、審議会を設けて、有識者や公募委員から指摘を受けながらブラッシュアップする過程を踏むことが多い。こうして原案がほぼ形になってから実施するパブコメは、計画作りの仕上げ段階にあたる。山梨総合研究所は、県や市町村等の計画策定の支援が業務の一つであるため、パブコメで寄せられる意見気になる存在だ。
近年のパブコメ件数をウェブサイトで調べると、山梨県内の自治体では「甲府市遊亀公園・付属動物園整備計画(実施計画)」(2019年2月)の109件、「第2次北杜市総合計画前期基本計画」(2017年1月)の101件が飛び抜けて多かった。
甲府市の計画をめぐっては、SNS上で市民がワークショップへの参加を呼びかけ、「歴史あるこの街の動物園をこの街の動物園らしく」といった意見が飛び交った経緯があり、関心を呼ぶ一因になった。北杜市は首都圏からの移住者が多く住環境に関心が高いから、との指摘を耳にする。筆者も今年4月、北杜市のある計画に関するワークショップのファシリテーターを担当したが、参加者のほとんどが移住者だったことが印象深い。
パブコメ件数の多寡は関心度のバロメーターともいえそうだが、策定支援する側からすると件数が「0」の時には、原案に「一定の理解」が得られたとホッとする。一方で「一定の理解」が本当に得られたと胸を張ってよいかとの疑念もないわけではない。多くの市町村で、計画への関心が高まらずにパブコメが皆無ないし数件にとどまるケースは珍しくはないからだ。
統一地方選と参院選が重なる選挙イヤーの今年、身近な行政にも興味を持ち、パブコメに「一票」を投じることで、市町村の計画作りに参画してみてはいかがだろう。
(山梨総合研究所 主任研究員 渡辺たま緒)