AIとデータ
毎日新聞No.544 【令和元年8月2日発行】
AI(人口知能)やIOT(モノのインターネット)が注目され、人間がやっている仕事がAIに取って代わられるのではないかと心配されている。確かに、自動運転の研究成果などを見せられると、これまで人間がやっていた仕事の多くがAIでもできるようになるのであろうことは想像に難くない。論理的な処理に関しては、これからのAI研究が大きな成果をもたらすのではないかと期待されるゆえんでもある。しかし、人間には意識や感情といった論理的とは言い切れない面も備わっており、AIですべて片付けられるほど単純ではない。
先日、テレビで中国・北京のある会社を紹介している番組があり驚かされた。この会社では、北京の街を走ったり、駐車したりしているさまざまな車を写真に撮り、それがどのような車種の車かをラベリングしてデータとして蓄積しているという。その目的は、何十万件というデータを、自動運転を研究している会社に販売することだという。つまり、AIは、大量のデータが必要であり、それを学習することが不可欠なのである。
こうした状況の中で、「GAFA」(グーグル、アップル、フェイスブック、アマゾン・コム)に代表される巨大IT企業が世界中の人々の個人情報を収集し、ビジネスに活用していることが問題視されるようになり、法的な規制をすべきだとの声も高まりつつある。個人の人権を侵害することのないよう、我が国でも個人情報保護法が制定されているが、国境を越えて利用されることまでは想定されておらず、個人情報に対して国際的に適正な取り扱いを定めることが望まれる。
一方で、複雑で多様な社会問題に直面している我々は、それらの問題解決を行うために、現状を正しく認識し、論理的に解決策を導く必要がある。そのためには、データに基づく思考が不可欠である。それにもかかわらず、収集したデータは、目的外使用は認められないなどの制約により、宝の持ち腐れの状態になっていることも少なくない。こうした問題意識から、山梨県をフィールドとして、さまざまなデータを収集する基盤を構築するとともに、それらをすでに公開されているデータと組み合わせて活用することにより、社会問題解決や新たなサービスの創出を目指すことを考え、競争的資金を申請しているところである。
(山梨総合研究所 理事長 新藤久和)