三世代同居のススメ


毎日新聞No.548 【令和元年9月27日発行】


 小学校は運動会の季節である。子供の数が減る中、山間部では高齢者を含め地域の人たちも参加するこの行事は、集落の存続・絆を確認する貴重な機会であろう。
 人口が減少に転じた自治体が大半を占める現在、出生率の向上や子育て世帯への手厚い支援を通じた子供の確保は、喫緊の課題である。ただし、支援策を積み上げても、他の自治体との差別化を図ることは難しい。小さな自治体では、保育料や給食費のみならず修学旅行などあらゆる学費を免除しているケースもみられるが、大きな自治体ではここまでしなくても様々な支援策は大きな財政負担だろう。

 そんななかで、出生率の向上策として改めて提案したいのが、三世代同居の推進である。既に強力に取り組んでいる自治体も相当数あると思うが、多くの利点がある。たとえば、祖父母に孫育てに参加してもらえることから、夫婦での共稼ぎが可能になり、急な発熱などの際にも頼りになる。その結果、自治体で検討が進む病児・病後児保育の施設の新設を減らすことができ、浮いた費用を他の子育て支援策に振り向けることができる。
 一方、高齢者対策としても有効である。孫の適度な世話は生きがいの発見になり、健康寿命を延ばすことにもつながる。その結果、元気な高齢者の増加、要介護率の低下、医療費の減少、自治体財政の改善をもたらすことも期待できる。
 子育て夫婦、その親世代、いずれにとっても、生活習慣の違いなどから同居は煩わしいという声を聴く。それなら歩いて往来できる距離に住む隣居や近居という形でもいい。孫世代にとって高齢者が家族の中にいることが自然なことと認識されれば、世代間の意識のズレも縮まろう。先の国勢調査によると、山梨県における人口百人当たりの三世代世帯人数は16人弱であるが、33人強でトップの山形県と比べると、半分以下である。

 三世代住宅やそれに準じた住居の新築・改築に補助金を上乗せする自治体が増えている。親世代と別居している子育て夫婦の皆さん。たくさんの利点がある親世代との同居・隣居・近居を是非考えてみてはどうだろうか。


(山梨総合研究所 専務理事 村田俊也