自治体の防災計画「強靭化」を
毎日新聞No.550 【令和元年10月25日発行】
2011年の東日本大震災を契機に、13年、「強くしなやかな国民生活の実現を図るための防災・減災等に資する国土強靱化基本法」いわゆる「国土強靭化基本法」が制定された。
この基本法では、「大規模自然災害等から国民の生命、身体及び財産を保護し、並びに国民生活および国民経済を守る」ことが国の果たすべき基本的な責任とされている。具体的には、大規模自然災害等に対する脆弱性を評価し、優先順位を定め、事前に的確な施策を実施して大規模自然災害に強い国土及び地域をつくることが求められている。
国土強靭化計画の目標は、いかなる災害が発生しようとも、①人命の保護が最大限図られること ②国家及び社会の重要な機能が致命的な障害を受けず維持されること ③国民の財産及び公共施設に係る被害の最小化 ④迅速な復旧復興——となっている。つまり、災害に対する「強さとしなやかさ(強靭性)」が求められているのである。
地方自治体に対しては「国土強靱化に関し、地域の状況に応じた施策を総合的かつ計画的に策定し及び実施する」ことが責務とされている。
地方自治体が策定する計画は「国土強靭化地域計画」と呼ばれており、地方自治体が策定する諸計画を傘下とする「アンブレラ計画」の頂点と位置付けられ、各計画の指針とすべきものとされている。
山梨県の策定状況は、県が策定している他、全27市町村のうち、山梨市、大月市、富士川町、道志村、富士河口湖町の6市町村が作成しているに過ぎない。策定率は18.5%となっている。
自治体の果たすべき役割の第一義は住民の生命を守ることである。
自治体が定める防災計画では、緊急用の食料備蓄や避難所の設置などを重視しがちだが、防災とは「災害」を「防ぐ」ことである。防災の第一義は「いかに災害を起こさないようにするか」を考えることにある。
災害によって亡くなった人にとっては、緊急時の食糧も避難所の設置も何の意味も持たない。人命を守ることが自治体の最大の役割である。
自治体は、改めて国土強靭化地域計画の重要性を認識し、早急に国土強靭化地域計画を策定し、それを踏まえて各計画の見直しを行うべきである。
(山梨総合研究所 主任研究員 小池映之)