グレタさんとトランプ大統領


毎日新聞No.553 【令和元年12月6日発行】

 スウェーデンの高校生グレタ・トゥーンベリさんは、国連で各国首脳に向かって気候変動に真剣に取り組むよう涙ながらに訴えた。それは、2015年に国連で開催されたサミットで採択され、2030年までに達成する持続的開発目標(SDGs)の17の目標の一つに掲げられていながら、各国のリーダーが必ずしも積極的でないことを憂いてのことであった。米国のトランプ大統領は、温暖化規制を行うパリ協定を離脱したことから、活動に不熱心な代表格といえるかもしれない。

 以前、地球温暖化がどのように進行しているか、気象庁から公表されているデータを調べたことがある。その結果、甲府、松本、新潟でも明らかに気温が上昇しており、これと歩調を合わせるように湿度が低下し、乾燥化が進んでいることがわかった。ちなみに、甲府の1895年の年平均気温は19.4度、平均湿度74%に対し2017年ではそれぞれ21.0度および58%となっている。この温暖化、乾燥化が顕著になったのは1964年辺りからである。つまり、東京オリンピックが開催され、東海道新幹線が開通した時期と重なる。
 人は、急激な変化は容易に知覚できるものの、徐々に変化する現象には鈍感である。そのため、気候変動や地球温暖化に対しては危機感が希薄である。それでも、近年の夏の暑さによる熱中症や、従来とは異なる大雨や台風による甚大な被害は不安を掻き立てるに十分である。しかも、こうした現象は、地球規模で発生していることから、気候変動や地球温暖化と無関係とは思えない。

 したがって、真剣に取り組まなければならないことは言うまでもないが、トランプ大統領のように、それを必要でないとして切り捨てることは禍根を残すだけである。やるべきことを、必要ないこととして適切に対応しないことは、問題から逃避することであり、自らの成長を妨げることにつながる。ましてや、そのことを見透かされることを恐れて汲々としたり、指摘されると逆に揶揄したり批判するようなことがあれば、もはや大国のリーダーとして尊敬されることはないであろう。

(山梨総合研究所 理事長 新藤久和