VOL.114 「1,200円」


 メルセデス・ベンツ日本は12月、東京都港区のショールーム「Mercedes me Tokyo NEXTDOOR」に立ち食いそば店「Minatoya 3」を開店した。提供される「立ち食いそば」の値段は1,200円。富士そばの「かけそば」は310円であるから実に約4倍だ。

 この異色のコラボレーションの狙いは、新しい顧客との接点作りやブランドの訴求・浸透への取り組みだという。
 新しい顧客とは今までメルセデス・ベンツを購入したことがない人たちのことをいう。メルセデス・ベンツ日本は、そういう人たちが立ち食いそば目当てでショールームに来て、メルセデス・ベンツを買っていってくれることを期待しているのだろうか。
 また、ブランドの訴求・浸透というが、立ち食いそばの美味しさに感動して、これなら車の品質も期待できるだろうと思ってくれると考えているのだろうか。
 メルセデス・ベンツ日本の真意は分からないが、先の狙いに対しての効果がどの程度あるのかと考えてしまう。確かに、高級ブランドであるメルセデス・ベンツのショールームを訪ねやすくするという意味では、敷居を低くする効果は期待できるかもしれないが・・・。

 私たちシンクタンクで言えば、顧客との信頼関係構築やブランドの訴求・浸透は、研究の成果や提供する調査結果の品質によって成り立つものである。
 基本は「QCD」、すなわち、Quality(品質)、Cost(価格)、Delivery(納期)である。良い品質のものを、高い生産性で、納期厳守で提供する。それがシンクタンクのブランドであり、ひいては顧客との信頼構築につながっていく。言い換えれば、本来の業務の品質である「QCD」の保証によってのみ、顧客との信頼構築は可能となるし、私たちの仕事のブランド化も可能となる。それ以外の方法では、それは実現できないのである。

山梨総合研究所 主任研究員 小池映之