良質な関係の構築へ
毎日新聞No.556 【令和2年1月24日発行】
「ガバメント・リレーションズ」という活動をご存知だろうか。
企業や団体が、事業や組織の活動目的を達成するために、政府や行政との関係を通じて情報交換、知識の提供、ロビー活動やセミナー・討論会などを行い、メディア戦略も含めて幅広く行う活動のことである。
特に、ヨーロッパでは、ヨーロッパ連合(EU)の政策や規制が企業活動に及ぼす影響が少なくないため、大衆に向けた情報提供活動であるパブリック・リレーションズ(PR)や、投資家とのコミュニケーション活動であるインベスター・リレーションズ(IR)などと並び、重要な活動としても位置づけられているそうだ。
こうした活動を参考に、日本の地域課題解決のための手法として、日本版の「ガバメント・リレーションズ」を確立していこうという取り組みが始まっている。
これまで、地域課題の解決を主に担ってきた自治体は、少子化・高齢化が進み、税収や人手が減り、ニーズが多様化・複雑化するなか、従来の制度や行政手法、リソースだけでは解決することが難しい課題に直面している。
一方で、テクノロジーの発展や市民意識の高まりを受けて、企業などが提供するサービスやソリューションが、地域課題の解決に貢献している事例も見られるようになってきている。
そこで、良質で戦略的な官民連携の構築により、企業などが持つノウハウやテクノロジー、リソースを地域課題の解決に最大限活用していくことが、日本版「ガバメント・リレーションズ」の目指すところである。このことは、企業側にとっても、新たなビジネスチャンスにつながる可能性がある。
しかし、多くの地域においては、企業などに、こうした地域課題解決のためのノウハウやリソースがあったとしても、うまく官民の連携がとれていないのが実情ではないだろうか。
先日、参加させていただいた勉強会では、登壇者が、自治体と企業・団体、双方の組織の“言語”や“価値観”、仕事の“お作法”などを通訳・翻訳できる人材の重要性を強調していた。
地域に山積する課題の解決に向けて、良質で戦略的な官民連携「ガバメント・リレーションズ」の確立が期待される。
(山梨総合研究所 主任研究員 小林雄樹)