あいさつの大切さを見直そう


毎日新聞No.557 【令和2年2月7日発行】

 「おはよう」「今日も元気だなぁ」「今日も一日頑張ろう」

 毎朝、甲府市内のある小学校の校門前から聞こえてくる声である。
 この2年ほど、この学校の先生が毎日のように同じ場所に立ち、子ども達の様子を確認しながら元気よく挨拶を交わしている。筆者も通勤時に通る道なので、先生とは自然と顔見知りとなり、お互いに挨拶を交わすのが日課となっている。たったひと声を交わすだけであるが、毎朝、とてもすがすがしい気分となる。同じように感じる児童もいるはずだ。

 弊財団が昨年、県立市川高校の生徒を対象に実施した地域に関するアンケート調査によると、地域に「誇り・愛着」をもっていると答えた生徒は全学年で7割以上であり、学年が上がるにつれてその割合は高くなっていた。この割合は、市川三郷町在住の生徒で9割以上、市川三郷町以外から通学している生徒でも7割を超えた。また、卒業後、「仮に進学や就職で市川三郷町から離れても、市川三郷町を応援したいか」について聞くと、実に9割を超える生徒が肯定的な回答をしている。
 理由として、「地域の皆さんが挨拶をしてくれる」、「会えば声をかけてくれて、地域が温かい」、「自分が受け入れられたような気がする」等が多く挙げられていた。
 昨今、安全上の問題から、特に小学校では、知らない人とは挨拶を交わさないようにと指導されることもあるようだ。小学生が対象となる凶悪な犯罪事件等が報道されるにつけ、この指導については理解ができる。
 しかし、毎日顔を合わせる地域の方々との関係においては、この指導が必要なのであろうか。顔見知り同士の人間が、挨拶すら交わさないことが、とても奇妙に思えてならない。

 今日では、同じ職場内においてすら挨拶を交わさないケースがあると聞く。そのような状態で、職場間において円滑なコミュニケーションが取れるのか甚だ疑問である。また、挨拶を交わすことすらできない大人が、多様なマナーなど語れないと感じてしまう。
 市川高校のアンケートは、今後の地域をつくる上で、挨拶(顔見知り間で十分)、声かけというコミュニケーションを見直すことがいかに大切かを示している。

(山梨総合研究所 上席研究員 古屋 亮