働き方改革?!


毎日新聞No.559 【令和2年3月6日発行】

 叫ばれて久しい改革の一つに「働き方改革」がある。
 「働く」とは何か。生活の糧を得るという現実的な面はもちろん、社会貢献を通じた自己実現という精神的な面も含めて表現することもあり、置かれた環境によってその定義は変化するものだろう。

 2018年労働力調査によると就業者に占める雇用者の割合は89.1%であり、「働く」とは一定の組織の枠組みを前提としているとも言える。このことから考えると、「働き方改革」という働く側の自主性を感じさせる呼称になっているものの、働く側が選択可能な余地がどれほどあるのか疑わしい。とはいえ、「働く」ことは人の歴史とともにあり、なぜ今、声高に叫ばれるのか。「働き方改革」という言葉が定着するほど、その必要性や意義と切り離され、独り歩きしている印象がある。言い換えると、それぞれの組織で『なぜ働き方改革が必要なのだろうか』という議論がおろそかにされ、時流に乗っているだけになってはいないだろうか。

 平成289月、国に働き方改革実現推進室が設置されて以降、改革のためのメニューも多数提示されてきた。それだけに、メニューの一つ、例えばテレワークの検討をするだけでも、「働き方改革」をしている、とも言えてしまう。しかしながら、このような動きはメニューの検討にすぎず、『改革の本来のゴール』が構成員に共有されていないのであれば、仮に制度を導入しても実態が伴うかは疑わしい。また、多くの組織でコスト削減等から人員削減が進み、一人一人が担う業務が増えていると言われている。そうであれば、徒労に終わりかねないことにエネルギーを費やす余裕はそれほどないはずである。つまり、エネルギーをかけて改革をしていくのであれば、『何のためにやるのか』というゴールを組織の構成員としっかり共有することが何より大切である。

 あなたは、そしてあなたの組織は、世の中の変化に目を背けず、向かい合おうとしていますか?

『最も強い者が生き残るのではなく、最も賢い者が生き延びるのでもない。唯一生き残ることが出来るのは、変化できる者である。』 (チャールズ・ダーウィン 科学者)

(山梨総合研究所 研究員 山本直子