物に本末あり、事に終始あり


毎日新聞No.560 【令和2年3月20日発行】

 「物に本末あり、事に終始あり。先後するところを知れば、則ち道に近し。」は、四書五経の「大学」の一節です。「大学」とは「大人(たいじん)」になるための「学問」のことで「大人」とは「世の中に良い影響を与える立派な人物」のことです。
 「物に本末あり」とは、樹木が「根」を「本(もと)」にして「枝葉(末)」を出すように、根本(原因)となるものがあって、結果が発生するということです。

 新型コロナウイルスは中国から発生し、今はヨーロッパが感染拡大の中心地となっています。日本を見ても、感染者を多く出している地域とそうでない地域があります。感染が拡大している地域は何が原因で広がっているのか。また拡大していない地域は拡大している地域と何が違うのか。その原因を突き止めることが今後の感染拡大を防ぐために重要ではないかと思います。
 プログラミング用語に「イベントドリブン」という言葉があります。キーボードが押されたり、ある時刻になるなどのイベントが発生した時に、プログラムが動く仕組みになっています。これも原因があって、結果が生じる事例です。
 私たちが日常生活を送るにあたって遭遇することは、他者からの意見や行動など、「結果」として突きつけられることがほとんどです。しかし、それら結果には、必ず「本」となる原因があります。これは行政など社会的な活動においても同様です。
 何が原因でそのような結果が生じることになったのか、それをリサーチして顕(「あきら」とルビを振ってください)かにすることが、私たちシンクタンクの重要な役割だと思います。

 何事にも重要な本質があり、優先順位があります。そこを踏まえて行動すれば、人の道を外すことなく、大人になれると大学の一節は教えてくれています。

(山梨総合研究所 主任研究員 小池映之)