VOL.117 「3月22日」
天気も良く暖かい日、陽気に誘われてぶらぶらと散歩。思わず立ち止まり見上げる桜。今年もこの魅力的な姿を見ることができた。この桜といえば何を想像するであろうか。お花見、出会い、別れ、満開の美しさ、散りゆく姿の潔さ、最近では国の中枢で騒がれている「桜を見る会」をイメージする人もいるのではないだろうか。桜は、我々日本人の心に古くから息づいており、古くは万葉集で詠まれ、江戸時代には、8代将軍徳川吉宗が桜の木を植え、飛鳥山を始めとした飲食をできる花見の名所を誕生させている。
ところで今年の桜の開花日は、甲府地方気象台の発表だと3月22日とのこと。開花日とは、標本木に5~6輪の花が咲いた日とされ、甲府地方気象台では、敷地内のソメイヨシノが標準木となっているそうである。この甲府地方気象台の標準木の開花日について、1953年から2019年の66年間で見ていくと、1950年代の開花日の平均は3月30日、2010年代の開花の平均は3月25日となっている。標準木の花が8割以上咲いた状態となった日として定義されている満開日も1950年代では平均で4月5日、2010年代では平均で4月2日となっており、開花日、満開日とも早まっていることが確認できる。この早まった一番の要因は、気候の温暖化にあるようである。
山梨県の100年間の年平均気温の経年変化について見ていくと、3月から5月の平均値は13.4度であり100年で2.3℃プラスとなっている。桜を始めとする植物は、気候の変化にとても敏感であり、我々の口にする野菜や果樹もその影響を受けるものとなる。特に果樹王国である山梨県においては、ブドウの着色不良を始め、その影響については、今後とも注視していく必要がある。
話を戻すが、桜は春を迎えるにあたり、欠くことのできないものであると思う。ちなみに、私の桜のイメージは、今年は新型コロナウイルスの影響で控えている人も多いだろうが、ワイワイと楽しいお花見と満開で迎える入学式である。特に入学式においては、将来娘と桜が咲き誇る中での家族写真を撮りたいと思っている。このささやかな願いをかなえるためにも、これ以上開花が早まらないこと、すなわち気候の温暖化を抑制していくことについて、まずは自分で出来ることからやっていこうと思う。
山梨総合研究所 研究員 河野彰夫