東京五輪へのリスタート
毎日新聞No.562 【令和2年4月19日発行】
新型コロナウイルスの影響から東京五輪の開催は1年程度延期となったが、開催に合わせて進められていた法改正は着実に進んでいる。
4月には、東京五輪を「たばこのない五輪」とするため、受動喫煙の対策強化を盛り込んだ改正健康増進法が全面施行となり、ホテルの客室以外の場所や飲食店など多くの人が利用する施設や店舗においては、屋内は「原則禁煙」とし、喫煙専用室でしか喫煙ができないようになった。
また、東京五輪を「環境に配慮した大会」とするため、7月からは「レジ袋の有料化」が始まる。レジ袋の有料化は、本県のスーパーマーケットなどではすでに取り組みが行われているが、これが全国のすべての小売業において制度化されることとなる。
他方、東京五輪の延期により、結果的に開催までに間に合うことになりそうなのが、中部横断自動車道の山梨―静岡間の全線開通である。着工当初においては東京五輪開催までには開通している見通しであったが、その後、度重なる工期の延長があり、最終的に2020年中の開通となったため、東京五輪の開催までには間に合わないものとされていた。
中部横断自動車道の開通後には、中央自動車道と東名高速道が接続し、アクセスが改善することによって、物流網の再編や観光客の来訪を期待することができ、沿線地域には、すでに新たな工場の建設などが計画されている。東京五輪が開催すれば、世界中から多くの人がこの高速道路を利用して本県を訪れることが期待され、世界中に本県をPRする絶好の機会となる。
甲府駅の改札前にある「東京五輪まであと何日」を表す電光掲示板は、来年の開催に向けてカウントダウンを再開した。アスリートたちも五輪の延期を受け入れ、着々と準備を始めている。本県においては、多くの業者が期待していた今夏の五輪特需は得られず、逆に新型コロナウイルスの影響から危機的な経営環境に直面しているが、業界や県、ひいては国全体が一丸となってこの難局を乗り切り、延期された東京五輪の効果を最大限に享受できるように準備が進められることを期待したい。
(山梨総合研究所 主任研究員 伊藤賢造)