また、いつの日か。


毎日新聞No.566 【令和2年6月14日発行】

 6月1日の夜8時。自宅のリビングでくつろいでいると、ドン、ドンという音が聞こえてきた。何事かと思い、窓から外を眺めると、夜空にきれいな花火が上がっていた。「今年の花火大会は中止になっていたような・・・。」そんなことを考えながらネットで調べてみると、その正体は花火大会ではなく、新型コロナウイルス感染症の早期終息という願いが込められた企画だと分かった。

 企画の名称は「全国一斉悪疫退散祈願 Cheer up!花火プロジェクト」。コロナ禍で苦しむ人たちのために何かできないかと考えた有志が企画し、賛同した全国163の花火業者が参加した。47都道府県200か所以上で一斉に花火の打ち上げが行われたが、新型コロナウイルス感染症拡大防止のため、見物客が集まらないよう、時間と場所は事前に告知せず行われたそうだ。山梨県内でも市川三郷町、韮崎市、笛吹市、都留市、甲州市で花火が上がり、打ち上げ時間は数分ではあったが、SNSには花火の写真とともに「元気づけられた」というコメントが多数投稿されていた。
 今回の企画のほかにも、秋田県大仙市の「日本の花火を愛する会」が「エール花火」という同様のプロジェクトを企画しており、7月10日までクラウドファンディングを行っている。山梨県内の花火業者も参加しているとのことで、またきれいな花火を見ることが出来るかもしれない。

 夏の風物詩である花火だが、今年は新型コロナウイルス感染症の影響で、全国各地の花火大会は中止に追い込まれている。山梨でも、県内最大規模の花火大会である市川三郷町の「神明の花火大会」が、6月1日に中止の決定がされた。1989年に第1回大会が開催されてから初めての中止だという。その他、石和温泉や富士五湖などの花火大会も中止が決定されており、今年は県内の主要な花火大会は行われないこととなった。
 花火大会の中止とともに、花火業界も苦境に立たされているだろう。そのような中で打ち上げられた花火は人々を元気づけ、笑顔にしたいという強い思いが感じられるものだった。元気を与えてくれた花火業者の方々には感謝の気持ちを伝えたい。
 ありがとう。また、いつの日か。再び皆と花火を見上げる日が待ち遠しい。 

(山梨総合研究所 研究員 清水洋介