「信用」と「信頼」


毎日新聞No.567 【令和2年6月28日発行】

 新型コロナの影響を受け対面でのイベントが自粛となる中、4月からスタートしたオンラインでのサロン。今まで直接会ったことのない様々な年代や職業の方と週12時間程度、私たちが直面している「今」について対話を重ねてきた。先日、「信頼」をテーマに開催した時のこと、参加者の1人が「信用」と「信頼」の違いについて話をしてくれた。信用とは過去の実績に基づくもので、信頼は未来を信じて頼ることの出来るもの。相手を信用していなくても信頼することもあるという経験談であった。
 私たちの日々の暮らしや仕事において将来への不安や恐れが広がる中で、これまで当たり前に存在していた生活のかたちが大きく揺らいである。ウィズ・コロナの時代、それに代わって、「新たな生活様式」なるものが位置づけられようとしている。

 先日山梨県が、感染症に強い事業環境づくりを目指し、山梨全体で安心・信頼を提供することを目指した「やまなしグリーン・ゾーン構想」を発表した。専門家委員会により感染予防対策を認証し公表することにより、地域の経済活動を支援するものである。こうした取組が進められていることにより、県民や観光客が様々なサービスを安心して利用できるようになるというものだ。行政が客観的なデータに基づいて事業者の提供するサービスに信用を与えることで、売上回復への効果が期待される。
 一方で、私たちは「信頼」経済ではなく「信用」経済と呼ぶのと同様に、過去の実績に基づく信用は、自分たちの未来を託すことと必ずしも同じではない。信頼とは、制度によって築き上げられた信用に基づいて、私たち一人ひとりが相手との間に築いていくもの。そう捉えるならば、新型コロナの影響が続く中で、感染症対策だけではなく、いつも頼りにしてくれる顧客との信頼関係を築いていくことが、これからの経済活動においてますます重要になるであろう。もしかするとこの関係性とは、コロナに限らず先行き不透明なこれからの時代に、私たち一人ひとりが最も大切にしなければならないものかも知れない。

 果たして私たちは、地域からどれだけの「信頼」を得られているのか、今一度考えてみたい。

(山梨総合研究所 調査研究部長 佐藤文昭