キャンプと防災


毎日新聞No.571 【令和2年8月23日発行】

 昨年の9月に関東を襲った大型台風は千葉県を中心に大きな被害をもたらした。特に千葉県南部では長期間の停電と断水が発生し、その後の市民生活に甚大な影響を及ぼした。最近でも九州を中心に大雨による大きな被が発生している。こういった状況の際、防災グッズが重要になるが、筆者はキャンプ用品を上手く活用している映像を目にし、非常に印象に残ったのを覚えている。
 考えてみれば、キャンプなどは基本的に電気が通っておらず、水道もないような場所で行われている。水道等があったとしても、数が少なく、自宅のようにすぐに使える状態にはない。そのため、キャンプの際に使用するガスコンロやランタン、水を貯水するタンクなどは、同様の状況下である停電時や断水時に非常に有効な道具となる。

 実際、ここ数年キャンプについては人気が高まっている。日本オートキャンプ協会によると、2019年のオートキャンプ参加人口は860万人と2018年の850万人から1.2%増加し、7年連続で前年比プラスが続いている。また、山梨県においても、2018年に「ゆるキャン△」のアニメが放送され、2019年にはドラマが放送されたことにより、登場したキャンプ場が「聖地」として来場者が増加傾向にあるといった話も出ている。さらに、今日の新型コロナウイルス感染拡大防止の観点からも、三密を避けることができるアウトドアへの関心は高まっている。
 筆者もこうした人気を背景にキャンプを始めてみたが、キャンプ用品が防災用グッズとして活用できることから、被災時に役立つレジャーだと感じている。今まで用意していたものは懐中電灯ぐらいだったので、台風の予報があると、不安を感じていた。しかし今では被災時にも役立つものが自宅にあるので、これまでよりも不安が和らいでいる。

 もし自宅にキャンプ用品があれば、被災時に活躍するものを整理してみてはいかがだろうか。またキャンプ未経験であるが、興味がある方は、ぜひ防災にも繋がるという視点を持って、キャンプを始めてみてはどうだろうか。

(山梨総合研究所 主任研究員 小澤陽介