デジタルと改革


毎日新聞No.576 【令和2年11月2日発行】

 「デジタル・トランスフォーメーション」という言葉を知っているだろうか。菅義偉首相がデジタル庁の創設を表明したことで注目を浴びた言葉だ。経済産業省によれば、「企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること」と定義されている。この定義は企業を前提としているが、行政分野においてもその必要性は叫ばれているところであり、デジタル庁は官民におけるデジタル・トランスフォーメーションの中心を担うこととなる。最近では、山梨県庁においても「デジタル県庁推進室」というプロジェクトチームが設置され、デジタル・トランスフォーメーションによる業務改善の下地づくりに取り組んでいるそうだ。

 デジタル・トランスフォーメーションに関連する話題で、最近こんな記事を目にした。株式会社ワーク・ライフバランスが今年の6月から7月にかけて行った「コロナ禍における政府・省庁の働き方に関する実態調査」で、回答をした480名の国家公務員のうち、86%が国会議員とのやりとりがメールではなくファクスだと答えたそうだ。メールであればテレワーク中でも対応ができるが、ファクスだとどうしても職場へ赴き対応せざるを得なくなるため、負担は大きいだろう。また、緊急事態宣言下でも約8割の職員が、議員への説明をオンラインではなく、対面で行うよう求められたそうだ。こういった問題の解決には議員側の意識改革が必要となる。国の中枢においても、いまだこのような課題を抱えている状態だ。こういった調査を地方にまで広げると、どのような結果が出るのか気になるところである。

 既に述べたように、デジタル・トランスフォーメーションはサービスや業務、風土の変革を行うことだ。それは単にデジタル技術を導入すれば成せるというわけではなく、組織の慣習や働く人の意識から変えていかなければならない。デジタル庁による改革を効果的に行うためにも、根本的なところから見直す必要があるのではないだろうか。

(山梨総合研究所 研究員 清水 洋介