VOL.126 35.8%


 4月の「気になる数字」に、歩行者が渡ろうとする横断歩道前で一時停止する車の割合を取り上げた。日本自動車連盟(JAF)の調査で山梨は、2018年がおよそ18台に1台しか止まらない5.6%(全国30位)と低く、昨年調査では26.0%(全国11位)と大きく改善されたものの、まだ4台に3台が通過してしまう実態に触れた。そして、今年8月の調査結果が公表され、山梨は35.8%と着実に伸び、過去最高の6位になった。ベスト10のうち、18年と比べた伸び率はトップだ。
 4月に山梨総合研究所に出向して以来、甲府駅北口から南口まで1㌔ほど徒歩通勤している。その間に信号機のない横断歩道を2カ所渡るが、9カ月前と比べて、一時停止してくれる車の割合がかなり増え、県民に道交法の規定が浸透しつつあることを実感している。
 都道府県別の調査結果が公表されるようになった18年から3年連続首位は隣の長野県。一時停止する割合は58.6%→68.6%→72.4%と高率で推移している。18年(39.1%)、19年(52.8%)と連続2位の静岡県は、順位こそ兵庫県(57.1%)に抜かれ3位になったものの54.1%と割合を伸ばしている。新潟県も13.8%(9位)→36.2%(5位)→49.4%(4位)と上昇しており、山梨を含む各県が順調に伸びていけば、中部横断自動車道で結ばれる「中央日本4県」の甲信越静は、「交通ルールを守る上位県」の評価を得られそうだ。全国平均は8.6%→17.1%→21.3%と伸びは鈍く、JAFは「まだ8割が止まらない」として、「横断歩道では手前で減速、歩行者優先。横断者も意思表示を」と呼び掛けている。

 山梨県警は、横断歩道を渡る歩行者とドライバーが交わすハンドサイン運動の推進と、進行方向に横断歩道があることを知らせる「ダイヤマーク」の認知度を高める意識啓発を進める一方で、立体的に浮き上がって見える横断歩道を甲府駅周辺に2カ所設けるなど、ハード面の工夫にも取り組む。視覚効果でいうと、愛知県警は横断歩道全体を見渡しやすいよう約12度の角度をつけた「鋭角横断歩道」の設置に独自に取り組み、事故減少効果が出ているというから、山梨でも導入を検討してほしい。
 横断歩道の形状は、1992(平成4)年に、それまでのハシゴ型から、側線を省いた現行のゼブラ型の“国際規格”に変わった。側線を省いたことで「横断歩道に雨水がたまりにくくなった」「運転者からの視認性向上や設置時間の短縮にもつながる」と良い面ばかりの評価がされているが、側線があったことで歩行者の存在により気づきやすかったという評価が抜け落ちているように思う。特に夜間、交差点などで黒っぽい服を着た歩行者がゼブラの黒い部分を歩いていた場合など、同化して運転者がハッとしたという指摘も実際にある。道路を横切る側線があれば、側線の見え方の変化から歩行者の存在に気づきやすい。例えば事故が多発する交差点には、側線の設置を検討することはできないものだろうか。

 横断歩道上での事故を減らすには、運転者も歩行者も事故形態をよく知ることが欠かせない。運転者は横断歩道が近づいたら速度を緩め、いつでも止まれる状況をつくっておく意識を持つこと。歩行者は、一時停止してくれた車のわきから自転車、バイクが突進してくることや、対向車線の車が止まらない可能性も含め、横断歩道が決して安全地帯ではないことも認識して渡ることが大切である。

(主任研究員 鷹野 裕之)