「偶然の出会い」を楽しむ!


毎日新聞No.581 【令和3年1月10日発行】

 小学生の頃は新しい年を迎えると、学校や親から今年の抱負を聞かれたものである。今では何となく新しい年を始めてしまうが、「当たり前」の尊さを昨年は幾度となく意識したことから、立ち止まって今年の抱負を考えることにした。

 「VUCA(ブーカ)の時代」という表現を耳にしたことはあるだろうか。2020年版経済産業省ものづくり白書によると、Volatility(変動性・不安定さ)、Uncertainty(不確実性・不確定さ)、Complexity(複雑性)、Ambiguity(曖昧性・不明確さ)の頭文字をつなげた造語であり、一言でいうと不確実な時代ということである。昨年の世界を取り巻いた環境は、まさにVUCAの時代に生きていることを私たちに実感させた。
 しかし、未来が不確実であることが前提だとしても、今を生きる私たちは幸せでありたいと願う。そうであるならば、取り巻く環境が変化していくように、私たちの幸せのかたちも少しずつ変えていく必要があるのかもしれない。近年の傾向として、人間関係は希薄化し、仕事の分業が進み、自分の興味の範囲を検索しがちな毎日である。これはある意味、予定調和が心地よい世界だが、世の中の大きな流れからすれば少々心もとない。
 そこで、「偶然の出会い」を楽しむことを私の今年の抱負としたい。それは、肩に力を入れることではなく、身近にある人や出来事とのささいな出会いにも意味を見出すことだと考える。例えば日常の活動範囲を少し広げ地域活動に参加してみる。仕事でも少し背伸びをしてチャレンジをしてみる。自分の知っている範囲やできる範囲から飛び出すことに心配や不安はつきものだが、うまくいかないことも含めて、それを楽しむ余裕を持ちたいものである。何しろ誰も答えを知らない、分からない不確実な時代に生きているのだから。
 そして、「失敗は成功のもと」「ピンチはチャンス」など昔からの言葉が教えてくれるように、ゴールの設定をするのだとしたら、たった1回の結果でなく、失敗も含めた成功までの過程を見守ることができる余裕を、個人にも社会にも望みたいものである。

 VUCA時代の2021年。あなたの抱負は何ですか!?

(山梨総合研究所 主任研究員 山本直子